(1)問題提起:幼児期から児童期・青年期の発達過程で、個別の認知・言語的な機能が形成されているにも関わらず、特に自他を価値づける自我・自己信頼性の発達が抑制されている場合に、その後の総合的な発達が抑制される事例が少なくない。発達的な障害の生成の基本機構として、脳機能の局所的な問題とは異なるマクロな発達連関の機構に焦点をあてた。
(2)対象と方法:①(幼児群)保育機関の3~6歳児、及び②(児童群)小・中学校の児童・生徒で横断研究と縦断観察を行い、自己信頼性と社会的交流性の発達連関の過程を検討した。③(障害群)特別支援学校の特に自閉性スペクトラム障害のある幼児・児童を対象として、自己信頼性の形成を支える保育・療育実践に取り組み、療育方法と対象児童の発達的な変化との関連性を検討した。また、コロナ感染症の状況の中で、自己信頼性と社会的交流性を尊重した新たな教育的な援助の重要性を提起した。
(3)結果と考察:●①手指での微細な圧力変動データを解析できる「握り圧計」を開発し、自己信頼性の発達過程を定量分析した。把握圧の波形データと手指操作の映像データを同時記録し、課題に応じた自発的な行動制御の特徴を評価して、手指操作と自己信頼性の発達過程を考察した。●②保育園(幼児群)、小中学校(児童群)、支援学校(障害群)で、どのような教育的・臨床的な援助が自己信頼性の発達を支えるかを検討した。自己信頼性の「時間・形成面」「空間・社会面」「価値面」それぞれに焦点をあて、自己信頼性と社会的交流性の関連を分析した。新たな教育方法によって自閉症スペクトラム特有の行動が改善された。●③障害児童で自己信頼性の発達が抑制されている事例が多かった。小中学校や特別支援学級で「自己理解アンケート」及び「心の健康アンケート」を実施した結果をもとに、自己信頼性と社会的交流性の観点から新たな指導・援助の必要性を提起した。
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