研究課題/領域番号 |
21K02432
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
柳沼 良太 岐阜大学, 教育学研究科, 教授 (30329049)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 比較研究 / 指導法 / 真心 / 人格教育 |
研究実績の概要 |
本研究では「道徳教育の国際比較に基づく有効な道徳指導法及び評価法の開発実践に関する研究」をテーマとして、本年度はその理論的な基盤づくりを行った。特に、我が国の道徳教育と諸外国(欧米やアジア)の道徳教育の理論的側面について類似点や相違点を比較検討した。その研究実績は以下の三点にまとめられる。 第一に、我が国の道徳教育と道徳科授業の指導法と評価法のあり方を再考して、複数の論文を発表した。例えば、単著論文「道徳教育の学問的基盤を再構築するための研究」や単著論文「真心で判断する道徳科授業の開発」を掲載した。また、岡山県において片山健治と共同で道徳教育推進教師の役割について検討し、共著論文「道徳教育推進教師の役割と仕事内容についての再検討と具体的提案」を掲載した。さらに、岐阜大学教育学部附属小中学校における「どう生きる科」を国際的な見地から構想して、干場康平、岩田尚之、大坪雅詩、柳沼良太の共著論文「新領域『どう生きる科』の構想と実践」を掲載した。 第二に、道徳科教育学の構築に向けて、各教科教育学と比較しながら検討した。その研究実績として、2022年3月に教科教育学コンソーシアムのシンポジウムにおいて、教育課程の基準(学習指導要領)を教科教育学としていかに分析・評価するかについて、道徳科の立場から発表して研究討議を行った。 第三に、我が国の道徳教育と諸外国の道徳教育との理論的な比較研究を行った。その研究実績としては、代表著者として柳沼良太・行安茂・西野真由美・林泰成編著『諸外国の道徳教育の動向と展望』を刊行した。特に、本書では日本道徳教育学会における海外の道徳教育研究者と共同して、我が国と諸外国の道徳教育における教育課程、指導法、評価法等を具体的に比較検討した。特に、ソクラテスの道徳教育の意義やアメリカの人格教育(キャラクターエデュケーション)との比較考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定としては、国内外の道徳教育について理論的・実践的に共同研究を行って論文を一つか二つ執筆する予定であったが、実際のところは、二本の単著論文と二本の共著論文を紀要に掲載することができた。 また、国内外の道徳教育の理論的な基盤を比較考察する予定であったが、他の海外教育研究者と共同することで、共著を刊行することができた。専門分野のアメリカの人格教育(キャラクターエデュケーション)だけでなく、古代ギリシャのソクラテスの道徳教育などを取り上げて検討できたところは、当初の研究の想定を超える成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナ禍であったため、国内外で道徳教育に関する資料を収集したり海外で学会発表をしたりすることが十分できなかった。そこで、今後はコロナ感染状況を見据えて、落ち着いた頃から、国内外の道徳教育の調査研究に順次取り組む予定である。 また、先に刊行した編著『諸外国の道徳教育の動向と展望』をふまえて、諸外国の道徳授業を日本の道徳科授業と関連づけて比較考察し、望まれる道徳科教育学を構築するための土台作りを行いたい。こうした国内外の道徳教育の比較研究を通して、道徳科教育学の構築とその吟味を継続して行うことにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年4月から2022年3月にかけても世界的なコロナ禍が続いていて、本研究のテーマである道徳教育の比較研究を実地するための国内外への調査旅行ができなかった。そのため、旅費の一部を次年度への繰越金としたため、次年度使用額が生じた。
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