研究課題/領域番号 |
21K02440
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
富田 英司 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90404011)
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研究分担者 |
野中 陽一朗 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (30735270)
坪田 康 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (50362421)
三和 秀平 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (70824952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教員養成 / Co-Agency / バーチャルコミュニティ / 放課後活動 / 参加型アクション・リサーチ |
研究実績の概要 |
本研究はCo-Agencyを発揮する能力を備えた教員を養成する学習環境を明らかにするために、以下3つの問いを明らかにすることを目的としてる。A) 大学教員はどのように学生をプロジェクトに導くことができるのか、 B) 学生がプロジェクトを主導していく過程は どのようにモデル化できるか、 C) 仮想空間の提供は各連携大学の学生グループにどのように影響するのか。令和3年度はそのための環境整備を中心に次の4点に渡って進めた:①放課後活動への学生の動機づけに関するアンケート調査、②愛媛大学の先行事例に関するノウハウ集約、③令和4年度から段階的に開始する高知大学及び信州大学での実践に向けた意見交換や学生への周知、④Discordを用いたオンラインコミュニティ構築。①については、研究の途中経過を研究会にて発表した。②については、先行事例のリソース(例えば、学生募集の方法、学生組織の運用方法、保護者へ配布した手引等)をウェブサイト(http://tomidalab.com)への掲載を進めた。加えて、令和3年度の愛媛大学放課後学習教室として、外国語学習のコースを1学期と2学期に実施し、3学期には論理回路に関するコースを実施した。③については、高知大学においては、「夏休み科学プロジェクト」「放課後学習教室(算数・数学)」「運動プロジェクト」の3つについて現在準中である。信州大学においては、教員主導型の取り組みとして、「対話的対話」のコースを学生にも参画してもらう形で実現する方向で検討中である。④については、Discordを用いてバーチャルコミュニティのためのプラットフォームを作成した。その試運転として1月から3月にかけて愛媛大学放課後学習教室で実践された「レッドストーン教室」に関するやりとりをディスコード上でおこない、今後複数大学で取り入れるための課題の洗い出しをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、令和4年度での活動開始に向けて高知大学では、体育と結びつけた遊び中心の活動、算数・数学と結びつけた遊び中心の活動、理科と結びつけた科学実験教室などが計画されている。信州大学では、道徳と結びつけ、Minecraftというメタバース環境を用いてリモートで哲学対話をおこなうという活動を、教員が枠組を先行して作ってそこに参画する学生を招き入れるというかたちで現在計画を進めている。京都工芸繊維大学では、令和3年度にリモートで開催された愛媛大学放課後学習教室において、参加者間でおこなわれた会話を効果的に録音するための自動応答プログラム(bot)の開発を進めており、今年度は技術開発上の課題を洗い出したところである。愛媛大学では、これまでにも進めてきた愛媛大学放課後学習活動を継続し、小規模ながら今年度も学生中心の活動を支援した。今年度は、特にMinecraftを用いた遠隔授業で自然な学習環境を準備し、英語学習への子どもの動機づけを促進するコースや、レッドストーンと呼ばれる機能を通して電子回路について学ぶコースを学生が企画・運営した。また、愛媛大学で進めることになっている、放課後学習活動に関するこれまでのリソース共有やノウハウの明文化についても、少しずつウェブサイト等へのアップロードが進んでいる。以上のことから、本事業は、全体としておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト2年目の取り組みとしては次の2点が最も重要な課題だと考えている。1つはバーチャルコミュニティの実質的な展開、もう1つは高知大学と信州大学での放課後活動の立ち上げ支援である。1つ目の課題について、初年度の取り組みではそのためのプラットフォームの準備をおこない、機能としてはバー チャルコミュニティの運用を可能にしているが、今の所、複数大学での実質的な運用までに至っていない。各大学のメンバーにおいて、対面での面識がない中 で、自分たちが普段使うSNSとは違うプラットフォームを日常的に活用してもらうようになるには高いハードルがあると考えられる。現在はDiscordを用いること を想定して準備を進めてきているが、このアプリケーション自体が利用を妨げる可能性も十分ありうる。その場合には、ほとんどの大学生が利用しているLINEと 近いインターフェースを備えたLINE WORKS等別のアプリケーションを活用することも含めて検討したい。もう1つのの放課後活動の立ち上げ支援については、一般論として、新しい事業を立ち上げる際には様々な課題が立ち現れるものであると言えるが、それらについて当該研究者間で容易に相談できる協働的な環境を用意し、課題解決に努めるようにしている。これら立ち上げのプロセスを克明に記録していくことが本プロジェクトの重要な貢献につながっていくものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本事業は、学生中心に企画運営する放課後等の活動を、大学として支援する取り組みを促進するというものであり、その性質上、コロナ禍等の影響を受けやすい。本年度は、そのような活動を実施するための物品等を中心に揃える予定であったが、現時点では2年目の活動を対面でも実施可能なのか、あるいはリモートだけで実施可能となるのか判断がつきにくい。そのようなことから各分担者において次年度に予算を残している。高知大学と信州大学では、新しい活動が開始されるため、1年目に残った予算はそれらの活動で利用される予定である。京都工芸繊維大学ではリモート環境での録音プログラムの開発に予算を投入する予定である。
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