研究課題/領域番号 |
21K02441
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
武久 康高 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (70461308)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 古典教育 / コンピテンシー / 古典の活用 |
研究実績の概要 |
本研究は、「古典学習の意義が分からず学習意欲が低い」といった高等学校における長年の課題の解決に向け、〈実践的な場面で古典を活用する〉水準を組み込んだ古典読解に関わる学力構造モデル、及び授業モデルを構築し、そこでの評価指標の開発を行うものである。 本年度はまず、〈実践的な場面で古典を活用する〉水準を検討するため、日本よりも早くコンピテンシー志向のカリキュラム改革を行ったドイツの状況を探った。具体的にはKaspar H. SpinnerやUlf Abrahamなど文学教育に関する論文や「一般大学入学資格のためのドイツ語科教育スタンダード」における問題や課題文の検討を通じて、「学習の転移(Tranfer)」の重要性と共に、文学史に関するコンピテンシーでは「文学テクストの持つ多義性と関わり合う」能力や「各文脈に応じてテクスト世界を意味づけ直す」能力が日本の古典学習においても有効だと確認した。 次に、叙上のコンピテンシーの育成を目指した単元案(教材『枕草子』「春はあけぼの」)を作成し、徳島県の公立高校で実践した(2022.1)。その結果は分析中であり、2022年5月の学会で報告予定である。 さらに、2020年度に広島県の高等学校で行ってもらった『更級日記』の実践をもとにした学会発表を行った。そこでは、生徒が現実社会や自分自身と古典教材とを関連づけるパターンは大きく2種類あり(①古典教材に描かれている心情や行動、状況と自分自身あるいは現代社会とを直接つなげるパターン、②古典教材から普遍的な問題や教訓、主題を読み取り、それを自分自身や現代社会とつなげるパターン)、そうした関連付け方に関する問題点を指摘した上で、授業では作品中の出来事を当時の文脈と結び付けることで意味付け、その上で現代社会や自分自身と関連付けていく読解の重要性を論じた(論文化。2022年8月に刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は【課題1】【課題2】に取り組む予定であった。 【課題1】〈実践的な場面で古典を活用する〉水準(=社会に開かれた古典学習)をも組み込んだ、古典読解に関わる学力の構造やその内実をモデル化する。 【課題2】各学年の古文教材を使い、〈古典の内容を「自分ごと」化し、自分や社会にとっての古典の意義を考える〉資質・能力(学力)の育成に向けた授業モデルを構築し、そこでの評価指標を開発する。 【課題1】【課題2】は、武久2015、2018、2020で作成した古文読解に関わる学力の構造、評価基準に〈実践的な場面で古典を活用する〉水準を組み込み、改めてモデル化するものである。〈実践的な場面で古典を活用する〉水準についてはドイツの文学史教育におけるコンピテンシーのあり方をもとに仮説を立て、授業化を行った。ただし学力構造の再モデル化や評価指標の検討はまだ行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、学力構造の再モデル化および評価指標の検討を行ったのち、徳島県・広島市の高校1・2年生を対象に検証授業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コピー費が少し余った。次年度のコピー費とする。
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