本年度は、まずドイツの文学教育における読解モデル(特にRosebrock(2020)、Zabka(2005)、Spinner(2006))をもとに、古典学習に関する読解モデルを作成した。このうち、〈実践的な場面で古典を活用する〉水準としては「情報のリンク」能力と「開放性の理解」能力を位置付け、その具体的な実践としては、ある和歌(例として「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」(古今集・恋1・469・よみ人しらず)を用いた)を飾るのにふさわしい場所について、理由とともに各自が考える「和歌を飾ろう」などの授業を構想し、勤務校や非常勤先の看護学校で行った。 また〈古典の内容を「自分ごと」化し、自分や社会にとっての古典の意義を考える〉資質・能力の育成に向けては、学習者が「自分自身のテクストを創る」ことを目的とし、そのために〈自分の「言いたいこと」を発見し、深めていくための対話相手〉として古典教材を位置づけるという授業モデルを構想した。具体的には、〈「私にとっての「名作」」という自身のテクストの作成を『枕草子』「春はあけぼの」との対話を通じて行う〉という授業を構想・実践し(徳島県の公立高等学校にて2023.1-3に実践)、その分析(「自分自身に関わるいかなるテクストを創らせるか」や「古典との間にどのようなテーマで対話を仕組むか」などの条件の検討など)および授業のモデル化を行った。この成果は全国大学国語教育学会で発表し、その後、論文化を行った。
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