研究課題/領域番号 |
21K02443
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
春日 由香 都留文科大学, 教養学部, 教授 (80870344)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 児童詩創作指導 / 表現技法 |
研究実績の概要 |
児童詩は、1920年代(大正時代)には文語詩から口語詩への転換と言われた「児童自由詩」、1940年代(昭和戦前期)には子どもの生活事象を題材に生活実感を表した「児童生活詩」、1960年代(昭和戦後期)には虚構のリアリティーを重んじた「主体的児童詩」とそれぞれ固有の名前が付けられてきた。また、児童詩創作指導においては、各時代において様々な題材や創作の方法が追究されてきた。1980年以降は「言葉遊び」の要素を取り入れた実践が盛んになり、子どもにとっての「ポエジー(詩精神)」が検討された。このように、我が国の児童詩創作指導の歴史は、戦前や大正期に隆盛し、その教育遺産は多く蓄積されたと言える。しかし近年、その研究材料を紐解く研究者が少なくなり、貴重な実践資料と児童詩 作品の分析が進まなくなっている現状がある。 本研究では、申請者が24年間にわたって実践した「児童詩創作指導実践研究」について、 ①表現技法 ②読み手である教師の役割 ③書き手と教室の仲間との対話の意味 の三点を柱として検討し、児童詩創作指導のあり方を明らかにして、モデル化することを目指す。本研究は、申請者が児童詩創作指導の実践をした際に、児童が書いた詩作品343編の一部を対象としている。その343編を「表現技法」を観点として分類・集計し、検討してきた。この「表現技法」のうち「題名の工夫・リフレイン・連の工夫・視点・表記の工夫・比喩(暗喩・直喩)・擬人法・ことば遊び・見立て・折句」については、既に検討を終えている。現在は、戦前の児童詩指導実践の歴史文献資料を調査して、本実践と比較を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度(2021年度)は、戦前から現代に至るまでの児童詩創作指導の歴史文献資料を収集し、詩の「表現技法」を項目として整理をした。また、戦前の児童詩創作指導実践の方法と、戦後の実践方法を比較した。その比較・検討した内容を基に、「過去の実践で既に効果が明らかになった指導方法」と「申請者が独自に開発した指導方法」との相違点を明らかにした。しかし、コロナ禍の状況により、当初予定していた児童詩教育の研究者の方々に指導をいただく機会をもつことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度に引き続き児童詩の「表現技法」である「オノマトペ・会話文」と、詩の創作指導では重要なファクターである「ペンネーム」を柱として、検討する。特に「ペンネーム」の匿名性については、認知心理学の知見も取り入れながら、詩の「表現」と作者である児童の「心理」との関わりにも言及していく。また、前年度実現できなかった、児童詩創作指導研究を専門とする方々を訪ねて、ご指導をいただく機会をもつことを計画している。 書き手の顔が浮かんでくる児童詩の「表現」と、書き手と教室の仲間たちとの「対話」、書き手と教師との「対話」を記述する営みを通して、児童詩創作指導の意味を明らかにすることを着地点として、本研究の成果物を公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の状況が原因で、当初予定していた宮城教育大学への出張が実現しなかった。それにより、旅費と謝金を使用することができなかった。次年度はこの計画を実現できることを見込んでいる。また、資料収集のために全国の大学附属図書館や国会図書館等に出向くことも計画しているので、資料の複写費用や交通費も必要となることを見込んでいる。
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