研究課題/領域番号 |
21K02452
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研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
羽野 ゆつ子 大阪成蹊大学, 教育学部, 教授 (50368437)
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研究分担者 |
井藤 元 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (20616263)
山崎 宣次 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (50622635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イノベーティブ教育 / 探究型授業 / 教員養成 / 威光模倣 / 教職準備性 / 総合的な学習/探究の時間 |
研究実績の概要 |
イノベーティブ教育(Innovative Practice, 教科横断的な学習や批判的思考、創造的問題解決など、探究型の学習を進める教育、以下、IP)の普及と教職準備性を高めることは、国際的な教育課題であり、日本の教師教育の課題でもある。本研究では、IPの実践準備に向けた教員養成プログラムを現職熟達教師と協働で開発・実践し、教職志望学生の現職熟達教師への威光模倣による学習過程を探るとともに、日本の教師教育行政のキーワードとされてきた、大学と学校現場の「連携・協働」の内実を実践レベルで検討し、IPの実践に向けた教員養成の方法の創出を目指す。 3年間の研究期間の1年目として、第1に、熟達教師のIP授業を現場実習前の2年次生が学習者として体験するプログラムをオンラインで実施し、その効果を検証した。直接対面することなく、初回からオンラインで実施しても威光模倣が生まれる可能性が示唆された。また、全面オンライン実施によって、複数の大学生・院生の参加が可能になり、現職教師との縦の関係に加えて、学生相互の横の関係、学部生と院生のななめの関係が生まれる学習の場へと計画は拡張された。第2に、教職志望学生の学習状況(教職課程の学習内容と教職準備性、批判的思考、授業観)を学部1年から4年生を対象に横断的に調査した。学部生は、現職教師に比べて養成段階でIPを学習していたが、IPの教職準備性は課題であることが確認された。 本研究の成果は、「イノベーティブ教育の実践準備性を高める教員養成の試み:大学と現職熟達教師の「連携・協働」による開発と実践」(国際教育学会,2021年8月)、「イノベーティブ教育(探究型授業)の実践に向けた教員養成の現状と課題」(『大阪成蹊大学紀要』, 第8号,2022年)など、学会発表2回、紀要論文3本(うち2本は査読付)の論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】欄に示した通り、2021年度は、研究1年目の計画どおり、オンラインで現職熟達教師からIPを学ぶプログラムを構想・実践し、威光模倣による教員養成の可能性を検討した。 まず、教職課程における学習状況の調査を行なった。批判的思考態度は学部3年次以降に上昇する傾向がみられたが、IPの教職準備性は教員養成においても課題となることが確認された。次に、模倣は理論的には教師の学習方法の一つとして把捉されてきたが、本研究をつうじて、威光模倣による教師の学習の実践と検証を行う途を開いた。具体的にはIPの先進的な取り組みを行う熟達教師の探究型授業を教職志望学生が生徒として体験するプログラムをオンラインで実施した。1年目の実践結果として、学生に現職熟達教師への威光と模倣による学習意欲が生まれていることが明らかになった。これまでの教員養成において、現場体験で学生が威光対象と出会える可能性は偶然性に委ねられていたが、本実践研究をとおして、学生の威光模倣による学習を学校と大学の連携によって広く教員養成に開いてゆく可能性が示された。2022年度は日本教育心理学会シンポジウムや日本教育情報学会、日本教師教育学会において教員養成に関する研究発表を行う。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、威光模倣による学習の縦断研究として、1年目に現職熟達教師への威光模倣による学習を希望した学生に対して、IPの学習プログラムを実施する。主たる学生は教育実習または学校体験活動に参加する3年生だが、教職志望の大学院にも参加を募り、「ななめの関係」を生み、協働で探究型授業づくりに取り組むプログラムを開発・実施する予定である。教育実習前後を含めて、1年間のプログラム参加の効果を、プログラムに参加していない教職志望の3年生と比較し検証する。 第2に、教職課程の学習調査も実施し、縦断研究による経年変化も検証する。 第3に、1年目の調査の結果、IPの教職準備性を整えるための教員養成の課題として示された、学生の授業観・教育観の客観化・相対化に向けた実践に取り組む。具体的には、シュタイナー教育やサドベリー・スクールなどのオルタナティブ教育に触れ、多様な学びを知る学習プログラムを新規に構想・実践し、学生の授業イメージの更新を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた国内出張がコロナ禍の影響で2022年度の出張へと日程変更になったこと、出張先で使用予定の機器の購入が不要となったこと、また2022年度に研究協力者も含めた長距離出張を予定しており、そのための研究費を確保しておく必要が生じたことにより、次年度への繰り越しが生じた。
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