研究課題/領域番号 |
21K02454
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
宮古 紀宏 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 総括研究官 (60549129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学校風土 / 発達支持的生徒指導 / 学校保護要因 / アカウンタビリティ / 学校改善 / 教育データ |
研究実績の概要 |
本研究は、学校における生徒指導が、児童生徒に対し、どのように機能し、どういった教育的成果を及ぼしているのかについて、「学校風土」(School Climate)に着目し、検討を試みるものである。とりわけ、「学校風土」の鍵概念である児童生徒の学校への愛着や帰属意識である「学校とのつながり」(School Connectedness)をはじめ、児童生徒の安心・安全感、思いやりや他者尊重、規範意識、教師との関係性、いじめ被害・加害経験等で構成される学校風土を生徒指導の教育的成果として、一定程度それを実現している学校の諸特性を学校を単位としてだけでなく、学年等といった校務分掌にも着目し、明らかにすることを目的としている。 2022年度の研究では、児童生徒の多様な教育的成果の指標の構築とそのデータの収集と学校改善への応用に関する知見を得るために、初年度に続き、日本と海外(主に米国)それぞれを対象に、先行研究のレビューを実施するとともに、日本の教育委員会と小中学校、米国カリフォルニア州の州教育省、教育系シンクタンク、郡教育委員会、学区教育委員会、高校への現地訪問による実態調査等を行った。 日本でも、いくつかの自治体ではGIGAスクール構想のもとで配布された情報端末を活用し、児童生徒の様々な教育データの収集とともに、教育委員会が提供するダッシュボード等でデータの加工・可視化が行われ、学校単位で、生徒指導の情報共有と指導・援助に活用されていることが明らかとなった。 また、米国については、州という単位での教育データの利活用の実態調査を行ったが、カリフォルニア州ではCalSCHLS(California School Climate, Health, and Learning Surveys)という学校風土や健康に関する調査が全州的に行われており、学校改善へ活用されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、2021年度にかなわなかった米国カリフォルニア州への訪問調査を実施することができた。カリフォルニア州教育省と教育系シンクタンクのWestEdへの訪問調査により、州レベルでのCalSCHLS(California School Climate, Health, and Learning Surveys)の取組についてヒヤリングをすることができた。 特に、州教育省にCalSCHLSの特設ページを用意し、Tableauを用いて、学校風土の教育データの可視化と学校改善へと接続させることが試みられていること、また、データシェアリングへのニーズに応えていることも明らかになり、日本への導入可能性等を政策面から検討する上で参考になった。 また、CalSCHLSの使用に係るライセンス契約をし、調査票の翻訳使用の権利を取得する等、今後、日本における質問紙調査を行う上で、研究面での充実を図る足掛かりとすることができた。 加えて、2022年度は、米国だけでなく、教育委員会や学校への訪問調査を行うことができた。とりわけ、教育委員会として学校ダッシュボードを用意し、所管する学校の生徒指導の充実を図っている取組の具体について聞き取り等を行うことができた。 以上を踏まえて、所定の目標はおおむね達成していることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、申請者の所属先で実施し、本研究とジョイントさせてすでに得られた日本の公立中学校の生徒と教員等に対する学校風土関係の質問紙調査のデータを分析し、考察する。そのために、学校風土関係の日米の先行研究のレビューを継続するとともに、データ分析と並行して、日本の教育委員会・学校への訪問調査、米国の教育行政機関・学校への訪問調査を補足的に実施する。 本研究の成果については、今年度スペインで開催される国際的な学校風土学会であるWCVS2023(IOSCVP)にて、自由研究発表を行う予定である。その他に、日本生徒指導学会でも成果について発表を行う。 また、2024年度以降、さらに科研費研究で本研究を発展的に継続させるために、協力地域の開拓、オンライン調査への変更に起因する諸課題の整理とその解決、オンライン調査の設計等の在り方等を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は国内出張及び海外出張とも、ある程度実施することができたが、当初予定していた地域の数や出張の日数も少なかったため、次年度使用額が生じることとなった。生じた次年度使用額については、2023年度に繰り越し、国内外の旅費に使用する。特に、米国カリフォルニア州への補足的な訪問調査と、2023年10月上旬に開催予定である国際的な学校風土学会であるWCVS2023(IOSCVP)に出席し、自由研究発表を行うため、これらの訪問調査及び成果発表旅費として使用する。
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