研究課題/領域番号 |
21K02461
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
隼瀬 大輔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (30623863)
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研究分担者 |
桂川 成美 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (20637855)
小室 明久 中部学院大学短期大学部, 幼児教育学科, 助教 (80847088)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域素材 / 和紙 / 木材 / 伝統的工芸品 / 図画工作科・美術科 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は主に1.地域素材を扱っている先行研究調査、及び、現職教員に対するアンケート調査、2.原材料・技法の調査(和紙・木材)、3.和紙を利用した題材実践の3点である。 1の先行研究調査では、和紙に関する地域題材を扱った先行研究論文の調査を行った。伝統的な地域素材を扱う際には、専門的な道具や材料を準備することや、素材を扱いには経験が必要であることが明らかになった。免許更新講習を行った際に現職教員39名に対するアンケート調査を行った。(内訳:保育園1名/こども園2名/小学校22名/中学校7名/高等学校4名/特別支援学校/4名)。アンケートでは約半数の教員が既に地域材に関する題材を行ったことがあり、また、今後も積極的に扱っていきたいという回答が多くみられた。一方で、「教材化されていれば」という意見が多くみられた。 2では、本年度は和紙と木材についての調査を行った。美濃和紙にも生産技術や材料などにより、伝統工芸品としての和紙から産業としての和紙まで種類が存在することがわかった。木材については、県による県産材を証明する制度や木育を推進する制度が存在し、現場での県産材を使用し題材開発活用に可能性があり、教員への支援の可能性を見出すことができた。 3では、伝統的な紙漉きを用具や材料を工夫し、小学校でも実践が行えるような用具の製作を行い、近隣小学校や民間放課後クラブでの実践することができた。実践を通し、対象学年により木枠の大きさや手順、制作方法について調整が必要であることがわかった。大人数のクラスでの実践の可能性などについて再度検討しなければならない部分も明らかになった。また、均一な紙の制作というだけでなく、紙漉きの制作工程を生かした表現の可能性も見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は主に和紙について調査、及び材料研究、実践を行った。和紙については上記のように小学生を対象に公立学校や民間放課後活動クラブで実践を行うことができた。この題材開発や実践を通して、専門家が作るものと同等の工芸品(製品・商品)を作ることを目的とすることは、環境や材料、技術の面で再現することの難しさがわかった。しかし、図画工作・美術という学校現場で、それらを忠実に再現することが目的ではなく、地域素材と触れ材料の特性を理解する経験や新しい表現の一つの方法として地域素材を扱う可能性が見出せた。 また、開発した題材をより多くの小学校で実践することや、図画工作を専門としない教員でも行えることを想定すると、対象学年を踏まえた題材の簡略化や教員の経験値を上げることが必要であることもわかった。また、本年度は近隣の公立学校の1校のみでの実践に留まった。今後はより多くの現場教員に実践の協力を依頼し、授業者側からの意見などについても調査していきたい。また、本年度は研究代表者及び共同研究者が主に題材について提案を行ったが、今後は教員目指す学生の題材開発力を向上のために、題材開発を学生へ依頼する予定である。和紙原料については各工房で独自性へもつながる生成過程があり、手間暇がかかっていることがわかった。教育現場で使用するためには、各工房で生成された原料使用するには高価となるため、原料は市販されている楮を使用することや、牛乳パックや古紙などと組み合わせながら「紙漉きの生成過程」に着目した題材の可能性が見出せた。木材については、県産材以外の木材なども安価で入手でき、「地域素材」という独自性を見出すことが難しいという課題が明らかになった。 複数の素材を扱っているため、各素材で材料研究、題材開発研究に時間かかることが遅れている理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は主に木材、粘土についての先行研究調査、材料研究、題材開発を進める予定である。これらの二つの材料は教科書で造形遊び、立体、工作など多く取り上げられている。 土粘土は、幼児でも扱いやすい身近な素材であるため、題材開発の可能性がある。しかし、油粘土、紙粘土など他の粘土に比べ、土粘土は制作過程で保湿管理の必要性、着色できないなどいくつかのデメリットも存在する。また、焼成することで土粘土の特性を理解できるが、各学校に焼成窯が存在しないという設備的課題、焼成に関して知識・経験を持つ教員人材の不足という課題もある。 以上のことを踏まえ、乾燥した状態から作り始めることや何度も作り変えられるような造形遊びに関する題材、学生への協力の依頼などを検討していきたい。また、焼成する際には、大学所有の焼成窯の使用を検討している。また、積極的に陶芸題材を取り入れている陶芸産地の授業見学、調査なども検討している。 木材については、岐阜県が取り組んでいる材料購入に関する助成制度や木育施設を活用し、既存の題材で県産材使用することで地域素材を意識した題材の可能性が見出せる。木材は粘土とは異なり、鋸や電動糸鋸などの道具を使用しなければ加工することが難しい。教書では中学年から鋸を高学年で電動糸鋸を使用することが想定されている。このことから低学年では、積む、並べる、貼るなど道具を使用した加工をしない題材、中学年、高学年では用具の使い方などを含む造形表現が想定される。これらのことを配慮しながら題材の開発を進めていきたい。 また、本年度の調査により、現場教員が地域題材に関心があることが明らかになった。学生だけでなく卒業生を中心として現場教員にも積極的に協力を依頼し、題材開発および実践を推進していきたい。これまで扱ってきた材料を含め、対象年齢、対象教員、時間数などを踏まえて、題材化をより具体的に検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関して新型コロナウィルスにより、予定していた県外への移動ができなくなってしまったため使用できなかった。旅費に関しては次年度で支出する予定である。
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