研究課題/領域番号 |
21K02470
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
服部 裕一郎 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (50707487)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 批判的思考力 / 社会的オープンエンドな問題 / 社会批判的モデリング / 社会批判的オープンエンドな問題 / 数学教育 / 批判的数学教育 |
研究実績の概要 |
本研究では,数学教育の文脈で,批判的思考力の育成にあたり,子ども達が遂行する「数学的モデル化過程」に着目し,子ども達の発揮する批判的思考の貢献可能性を検討するとともに,批判的思考力を促進・誘発するための算数・数学授業における教師の役割を明らかにすることを研究の目的としている。より具体的には,以下の3点を研究課題として設定した。Ⅰ.数学的モデル化過程を遂行することで子ども達の批判的思考が促進・誘発され得る教材の開発 Ⅱ.数学的モデル化過程の「定型化」,「数学的作業」,「解釈・評価・比較」の各場面における批判的思考力の貢献可能性の検証 Ⅲ.数学的モデル化過程を遂行することを軸とした批判的思考力育成のための指導事例集の作成 研究の初年度(2021年度)では,数学教育における批判的思考力の育成にあたって,数学的モデル化過程との関係を考察した。その結果,批判的思考力の育成(特に広義の意味での批判的思考力の育成)にあたっては,社会批判的モデリングの舞台が調和的であることが明らかとなった。そこで,これまでの研究において教材開発の理論的基盤としていた社会的オープンエンドな問題をその観点から更に発展させ,「社会批判的オープンエンドな問題」(SCOEP)を構築した。 SCOEPsでは,倫理的な枠組みの中で社会的判断力を養うことと,真正な問題に対して数学的にも社会的にも多様な解決策を育むことの両方の目的が統合されている。このフレームワークは,数学的思考による社会的意思決定を育むプロセスと,社会的正義を実現するために数学的思考を批判的に検討するプロセスが共存するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように,研究初年度において,本研究の理論的基盤となり得る「社会批判的オープンエンドな問題」を構築することができた。この成果は,査読付論文としてJournal of Educational Research in Mathematicsに掲載されている。また,日本科学教育学会第45回年会(鹿児島)於:オンライン開催(2021.8.21)にて,課題研究「トランス・サイエンスな問題に対応する数学教育:社会批判的モデリングの実装可能性」を企画することができた。数学教育における批判的思考力の育成について,社会批判的モデリングの観点から教材を開発し,数学授業を実装することの可能性を検討することができた。このことからも本科研の現在までの達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては,社会批判的オープンエンドな問題の枠組みの更なる精緻化及び,この枠組みの基で,授業実践を行い,生徒の発揮した批判的思考力の様相を詳細に検討することが挙げられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品の購入が3月末までに間に合わなかったため,幾らかの次年度使用額が生じた。4月以降に順次執行していく計画である。文献の購入を中心に執行予定である。
|