小中学生数名のグループ単位でのものづくりや情報スキルを用いた問題解決について3年間で100例以上を観察及び参与観察を行った。条件として以下を設定した。(1)対象として現実世界での問題解決をとりあげ,解決のプロセスを実際に経験させ,少なくともプロトタイプレベルの解決を行う。(2)解決の手段としてものづくり,情報系の構想設計製作を行う。具体的には機構部分を含めたハードウェア,ネットワーク利用によるデータ取得,3Dプリンタの利用等の技術を含む。(3)解決過程において,データに基づく問題の分析または効果の評価について関与を促す。 評価研究の成果として学習のためのフィードバックの有効性が示されており、学習者の反応、徴候に応じフィードバックを行った。結果として以下4点を示す。1問題の発見と分析,解決策の考案に至る各部分で議論が発散する傾向がある。ここで,解決の種を例示して考えさせることにより,現実的な時間範囲に収まり現実の問題解決のひな形経験が可能となる。2システムの構想設計,製作の過程では,実施可能な時間に合わせて学習者が実際に関与する度合いを大きくできるように配慮し時間を要する工程で治具等の用意が効果的である。3問題の分析,解決策の考案,構想と設計実装,さらに完成前のトラブルシューティング型問題解決の各段階において,問題分割のスキルが有効である。これはコンピュテーショナル・シンキングの概念であると同時にプログラミング的思考にも含まれる。4問題の核心となる関係を図的に表現し,図的推論を生かすことで複雑な現実問題,複雑なシステムを効果的に分析または構成し問題解決に至る過程が促進される。これに関しては米国の大規模コホート研究において小学生時の図的推論能力がその後の理系進学を予測する効果や,指導による図的推論能力の向上が示されており,わが国の学習指導の在り方に重要な示唆となり得る。
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