研究課題/領域番号 |
21K02497
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寺床 勝也 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (70264455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ティンカリング / 木育 / ものづくり / フロー状態 |
研究実績の概要 |
ティンカリングは、試行錯誤的に素材や道具を「いじる」活動である。個人のスキルに基づく自由な創作活動は、没入感の高い活動となり、満足度や自己肯定感を高めるとされる。また、ティンカリングは、幼児教育の「構成あそび」を連想させ、初学者にとって有益な学習活動と考えられることから、学習指導要領のめざす「学びに向かう力」へ結びつくと考えられる。 本年度の研究では、大学生を対象とし、ティンカリングを取り入れた木育活動の「つくる活動」を実践することで、どのような集中度や満足感が得られるかを確かめるための授業実践を行った。評価方法は、大学生自身によるフロー状態の調査方法で、オリジナル手法を開発した。 学習題材をPine Wood Derbyを参考に、3コマの集中講義(1コマ90分)とし、「木のクルマづくり」の演習をティンカリング活動とした。教材は、車体シャーシをスギ材(厚さ10mm、幅56mm、長さ150mm)1枚とし、フロントおよびリアのオーバーハング20mmの車体底面に1.7mmのルーター溝切加工が施され、車軸に見立てた鉄丸くぎ(25mm)を容易に仕込めるよう準備した。高さ1.3メートルから下る長さ4メートルのコースを走行させ、タイムを競う内容とした。ただし、車体重量を100グラムの上限設定とし、オプション材を付加できることとした。すなわち、位置エネルギーを最大化すれば運動エネルギーを最大に得られること、車体形状を流線形にすること、車軸と車体の摩擦抵抗を減らすこと、車輪を軽量化し慣性モーメントを低減させることなど作業工程ごとに、フロー状態を示すチャート図から自己判断させた。 その結果、フロー状態となった局面では、集中度が増すばかりでなく、活動が楽しい状態が続いていることが明らかとなった。特に、コース試走の場面が最も多くフロー状態となり、次いで、車体の工夫の場面となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症予防対策のため、今年度計画予定していた、「幼児を対象とした木育活動」の実践・観察ができなくなった。そこで本年度は、対象を大学生に限定し、ティンカリングな木育活動の実践を通じて、大学生の集中度を測定する手法を新たに開発することとした。大学生の場合、調査の趣旨説明を行うことで、フロー理論の意味を理解し調査協力することができた。また、ティンカリングな木工教材を開発し、力学的エネルギーの保存則の原理を楽しみながら学ぶことのできる教材開発ができたといえる。また、現在進行している、中学生を対象に同様の教材をグループ学習で展開してみたところ、学習への取組や集中度は高まり、苦手分野とする理科的要素や物理現象を楽しく学ぶことのできる教材となったことが成果となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症予防対応を行いながら、初年度と同様引き続き、大学生・中学生を対象にした、ティンカリングな教材開発を進めていく予定である。あわせて、幼児向けの木育空間づくりに向けた環境構成を幼児個別を対象として、ティンカリングな木育活動の開発を継続していく予定である。そのため、視線追尾システムを導入することで、幼児がどのような活動状態にあるのかを追跡することで、被験者のもつ興味対象、フロー状態における視線動態などをエビデンスとした基礎資料を収集し、ティンカリング活動の学習効果について検証していく予定である。
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