研究課題/領域番号 |
21K02497
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寺床 勝也 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (70264455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ものづくり / ティンカリング / 環境構成 / 幼児教育 |
研究実績の概要 |
ティンカリングは、試行錯誤的に素材や道具を「いじる」活動である。個人のスキルに基づく自由な創作活動は、没入感の高い活動となり、満足度や自己肯定感を高めるとされる。また、ティンカリングは、幼児教育の「構成あそび」を連想させ、初学者にとって有益な学習活動と考えられることから、幼稚園教育要領の「遊びこむ」姿を実現するとともに、学習指導要領のめざす「学びに向かう力」へとつながるものと考えられる。 本年度の研究では、幼児を対象としたティンカリングを取り入れた木育活動の「つくる活動」を実践することで、どのような学習効果と課題があるかを確かめるため、自由保育の場面で授業実践を実施した。評価方法は、幼稚園教諭による観察法に基づく評価で、評価項目は、サンフランシスコにあるエクスプロラトリウム博物館が提供する「学びの様相」による評価を実施した。 実践は2022年11月~2023年3月にかけて、園児たちから自発的に発出した「ツリーハウスづくり」プロジェクトをテーマにものづくりとティンカリングが融合した木育活動を展開した。試行錯誤を通して木材の加工法、道具の使用法等を遊びながら学ぶ姿が認められた。5・6歳児は、協同的な学びへ向かう時期であり、仲間、根気強さ、集団ルール、正義感などの獲得ステージが求められている好機でもある。このような時期に環境構成を実現したティンカリングな木育活動の教育効果について教師による評価はおおむね好評で、幼児教育におけるティンカリングな木育活動の可能性を広げたといえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度(2022年)の夏までは、新型コロナの感染拡大防止のため、研究活動が遅れていたところであるが、研究活動が動き始めた令和4年11月から幼稚園との協力体制がすみやかに進み、想定以上の成果があがった。 その背景には、ティンカリングな木育活動という学習テーマが、幼児に受け入れやすい性質のものであることや、5・6歳児の特徴である、「協同遊び」と「構成遊び」が盛んに進むことから、本研究のテーマであるティンカリングな活動を実践することで、さまざまな教育効果を確認することができたといえる。 ティンカリングの目指す教育目的は、製作品の完成を目指すものとは異なり、試行錯誤的な製作活動を通して、さまざまな意味を見出すところに力点を置いているため、幼児向けの活動として多くの知見を得たことであった。さらに想定外の結果も確認できたことから、今後はこれらを総括する必要があるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は最終年度になるため、これまでの知見の総括をしつつ、さらなる知見の収集を進めたいところである。新型コロナ対応で令和4年度は年度終わりから実践が始まったため、さらなる教育実践の収集を行いティンカリングな教育活動の検証とカリキュラムの実現に向けた基礎的資料の収集を行いたい。 具体的には、引き続きティンカリングな木育活動の実践として、多数小型の木材を環境構成として準備し、園児がどのようなものづくり活動を自由に展開するかについて、試行錯誤的活動から生み出されるイノベーティブな実践例を収集する。 幼児教育の段階は、続く小学校・中学校のSTEAM教育の前駆体としての意義があると想定するため、ティンカリングな教育活動の教育効果について改めて情報を収集し考察する。 最終的な総括として、幼児教育からみた科学技術教育について検討を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の前半は、新型コロナ対策の影響で、教育現場での実践がなかなか思うようにできない状況となったため、次年度使用額として57,215円を計上する。使用計画としては、材料の購入費と旅費にあてる予定である。
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