最終年度は、ティンカリングを実践するための要素に分割し、木質材料、木工道具類、作業空間(対人関係も含む)の3視点でティンカリングな実践を構成した。本調査では、幼稚園児から小学校高学年の不特定多数の親子を対象に端材木工による「家づくり」をテーマとした1時間のイベントとし、アンケート調査による満足度等を検討した。また観察法により作業風景からティンカリングな活動を抽出し考察した。端材木工の前提として「子どもたちが自由な発想で木工を楽しむ」こととした。すべての端材が同じ形ではないため、ティンカリングの目的である自由に作り変えるという技術的な側面も兼ね備えることができ、子どもたち自身で自ら考えて製作する機会を提供できる点も研究の視点として教育実践した。その結果、ティンカリング要素(端材・道具・親子空間)を取り入れた活動の成果はアンケートから高い満足度を得られた。子ども達自身が主体的かつ創造性あふれる時間を提供する機会になったといえた。子どもたちが「またやりたい」と思えるような端材木工を開発できたことはこれからの木育の推進にもつながるといえた。ものづくりを通して、材料同士の接着の難しさや、木材の破壊形態などを直接体験しながら学べることもティンカリングの利点であり、引き続くSTEAM教育のレディネスを構成するものと考えられる。一方、ものづくりに対して魅力を感じない子どもへの働きかけや工夫について今後の課題といえた。 3年間を通して、参加者の製作意欲に応じて材料や道具類を適切に配置することで、幼児から実践可能なモノづくりの環境構成を整えることができるといえた。また、ティンカリングなものづくりによる自由な発想と独創性を通して、材料の特性や加工技術の基礎的な考え方、介在する物理法則等を発見する手立てとなることも示唆された。
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