研究課題/領域番号 |
21K02510
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
藤川 聡 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (20710908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 失敗場面 / 製作学習 / 原因帰属 / 教訓機能 |
研究実績の概要 |
本研究では,技術科の製作学習の中で出現する生徒の失敗場面に関わり,どのような認知カウンセリングが適切かについて,原因帰属と教訓帰納の両理論から明らかにしようとするものである。令和4年度は原因帰属と失敗観の関連から以下の成果が得られた。 筆者は自身の先行研究の中で,失敗観尺度の得点と原因帰属を調べるアンケートの得点との相関分析により,製作学習における原因帰属理論の適合度を検証している。そこでは,木材加工の複数の作業において,失敗観における「ネガティブ感情価」と失敗の原因帰属における「能力帰属」との間に有意性のある正の相関を示している。令和4年度は更に詳細な分析として「ネガティブ感情価」を高群・中群・低群に分けて「能力帰属因子」との分析を行った。その結果,複数の作業において,「ネガティブ感情価」と「能力帰属」の相関では高群と中郡・低群とで交互作用が見られ,高群が前提となる結果に強い影響を及ぼしていることが示唆された。また,「ネガティブ感情価」だけでなく「学習可能性」においても同様に3群に分けて分析したところ「能力帰属」との相関において同様の結果が得られた。この結果から見れば,失敗観については特に高群が「能力帰属」と反応するため,事前にその傾向の生徒を把握しておくことで,適切な心理支援に繋がるのではないかと考えている。他の文献において本領域における同様の研究手法・結果については,筆者の調査の範囲では見当たらないため,失敗場面の支援における新たな資料が提供できるのではないかと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,学校現場での教育実践研究を実施する予定であったが,コロナ渦が収束を迎えつつあり学校活動をポジティブに捉えようすする中,本研究が持つ「失敗」というネガティブなワードのためか敬遠される傾向にあり,予定していた教育実践やアンケート調査を実施することができなかった。一方,自身のこれまでの実験データを再分析・再検証する機会が得られ,研究実績の概要で示すような結果が得られた。また,文献調査の時間が確保もできたため,前述の結果と合わせて研究計画が良い方向に修正された。それにより妥当性の高い研究が行える目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,今年度得られた知見について論文化を行う。加えて,他のあらゆる作業における失敗場面において同様の結果が出るのか,もしくは,作業に違いによってそれぞれ特有の傾向が出るのかについて検証したい。また,令和4年度に行うことができなかった学校現場における実践を通じた検証についても同時に進めたい。それにより,製作学習の失敗場面における達成動機付けの原因帰属における因果モデルの解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた教育現場での実践及びアンケート調査について,協力校が十分に確保できず,それらが実施できなかった。理由としては,前述の通りコロナ渦の収束に伴い,失敗に関わる研究が敬遠される傾向が強かったことが主な原因と考えている。それにより,打ち合わせや調査に関わる旅費や学会発表に関わる旅費の執行が滞ったことで本来予定していた執行額を下回ったため差額が発生することとなった。 令和4年度に実施できなかった調査や教育実践及び学会発表について,令和5年度に持ち越すため,生じた次年度使用額については次年度配分額と合わせ,それらに関わる物品費や旅費として使用することを計画している。
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