研究課題/領域番号 |
21K02522
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
栢野 彰秀 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (50466471)
|
研究分担者 |
森 健一郎 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (70710755)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 理科の見方・考え方 / 探究 / 問題解決 / 中学校 / 小学校 / 授業実践 / 主体的に学習に取り組む態度 |
研究実績の概要 |
研究初年度のうちに本研究の3つの目標のうち、1番目と2番目の目標は達成されたので、研究3年目になる本年度は3番目の目標である「評価の在り方」について先年度に引き続きさらに研究が深められた。もちろん、1,2番目の目標である理科カリキュラムを構想・実践しながら、実践を通した「評価の在り方」の研究である。 研究成果の公開は、学会発表2件、成果報告書1冊、研修会2回できた。 学会発表は、日本理科教育学会第73回全国大会、日本理科教育学会第72回中国支部大会で口頭発表した。いずれも、理科の見方・考え方を働かせる探究の過程を経る授業を中学校において行い、今、現場の教員が困っている「主体的に学習に向かう態度」の評価の在り方について検討を加えたものである。 学術論文の掲載は今年度はなかった。これは、授業実践の時期の問題で2023年度中に投稿できなかったからである。すでに学術論文の原案は用意できており、投稿するだけになっている。 成果報告書は、『理科の見方・考え方を働かせる探究(問題解決)の過程を経る小・中学校の授業実践3』と題された、一カ年間の実践事例集を研究協力者の小・中学校教員とともに編集・発行し、島根県松江市内の全小・中学校に今年5月末までに配布が完了する。この実践事例集には、小学校の事例1報、中学校の事例4報が報告されている。このうち、小学校2報、中学校3報は学会発表・学術論文で報告した以外の実践例の報告ができた。 研修会は、春と冬の2回開催できた。山陰両県の小・中学校教員向けの研修会が開催できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の3つの目標のうち、「①小・中学校理科の各学年・各単元で子どもが働かせる理科の見方・考え方を整理する。」については研究初年度中にできた。 「②理科の見方・考え方を働かせる理科カリキュラムを構想・実践する。」及び「③子どもが働かせる理科の見方・考え方の評価の在り方を明らかにする。」について、小学校3年1単元、4年1単元、中学校1年1単元、2年2単元、3年1単元のカリキュラムを構想し実践できた。これらの実践のうち、小学校4年を除き、「主体的に学習に取り組む態度」の面からの評価の在り方に検討を加えた。 ①については概ね研究初年度に整理できた。②,③については、小・中学校で授業実践は進んでいるが、まだ合計で数単元しか授業実践が行われていない。最終年度では小学校・中学校の可能な限り多くの単元で授業実践を行い、評価の在り方に検討を加えるべき課題が残されているので、「概ね順調に進展している。」という自己評価となった。 昨年度までに、「態度」の評価に検討を加えることで、1)記述分析に行動分析をつけ加えて評価を行う必要があるのではないか、2)同一の学習場面で「思考・判断・表現」と「態度」の評価は可能ではないか、3)評価の際には評価基準の作成が必要不可欠ではないか、4)「自己調整し続ける」という考え方を導入すれば良いのではないか、という諸点までには課題が整理できた。今年度は、1)をもとに、2)および3)についての仮説を確かめる実践を行った。しかし、何れも授業実践を行い、授業評価も終わっているものの、未だ学術論文で成果が公開できていないため、「概ね順調に進展している。」という自己評価となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度も、実践研究の成果を可能な限り多く口頭発表及び学術論文の形で発表し、広く成果を公表する。教員研修会も行いたい。 今年度も①,②,③全てについて研究計画書通り、小・中それぞれについて可能な限り各校種・各学年・各単元の具体についての実践的知見を蓄積していく。 ③の評価については、研究計画書に記載した評価の3つの観点のうちの認知的能力といえる「知識・技能」と「思考・判断・表現」だけを「理科の見方・考え方」と関連づけた評価を行うのではなく、非認知的能力といえる「主体的に学習に取り組む態度」の評価とも関連づけないといけないことがこれまでに分かったので、この点にさらに重点的に検討を加えたい。 「態度」の評価については、これまでに3つの仮説が立った。今年度もこれらの仮説を確かめる取り組みを行うとともに、未踏である一単元や学期、学年を通じての「態度」の評価の在り方についてについても実践的知見を蓄積する。特に、同一の学習場面で「思考・判断・表現」と「態度」の評価がは可能であることが確かめられれば、研究計画段階で視程に入れていた「知識・技能」と「思考・判断・表現」と研究を進めていく中で明らかになった「態度」の評価を融合させて、総合的な評価が行えると現時点では考えている。この点を明らかにしたい。 加えて、本研究組織が新たに検討を始めた「自己調整し続ける」という捉えの妥当性も一連の取り組みによって明らかにしたい。このことによって、「主体的に学習に取り組む態度」を含めた授業の評価の際には、「粘り強い側面」と「自己を調整しながら学習に取り組む側面」をどのように取り入れれば良いかの一つの方途が見えてくると期待している。 今年度から附属義務教育学校後期課程が国研の「態度」の評価の研究協力校となったので、さらに深く・広い実践研究が見込まれる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
印刷製本費(約8万4千円)の支払いが翌年度(2024年5月)になったためである。
|