研究課題/領域番号 |
21K02523
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗原 慎二 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80363000)
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研究分担者 |
深谷 達史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (70724227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 児童生徒用協同学習定着度尺度 / 包括的生徒指導尺度 / 協同学習指導行動尺度 / 協同学習 |
研究実績の概要 |
2021年度には「協同学習指導行動尺度」を作成することができた。これは教師の指導行動を情動面の指導(「個に対するポジティブ支援」と「ポジティブなピアコミュニケーションの支援」の2因子)と、認知面の指導「(個人質問支援」「共同思考支援」「個人思考支援」「個人資料読解支援」の4因子)にわけてとらえる尺度であった。 2022年度は、この6つの因子にかかわる教師の指導行動によって、児童生徒は支援されているという認識を持てているのかを確認するために,「児童生徒用協同学習定着度尺度」を作成することに取り組んだ。この研究は、データを収集し、分析をするところまで進んだが、最後のまとめの作業が残った状態である。 また、2022年度はこの「児童生徒用協同学習定着度尺度」と同時に、こうした指導行動が、児童生徒の個人的-社会的資質や能力にどのような影響を及ぼしているのかを確認するために,個人的-社会的資質や能力を測定する「包括的生徒指導尺度」を作成に取り組んだ。結果として、個人的-社会的資質能力を測定する「包括的生徒指導尺度」を作成することができた。これは①パーソナリティ、②社会性、③学業、④キャリアの四領域の発達状況を確認する尺度で、因子としては、個人的資質因子として、「レジリエンス」「キャリア志向」「学習意欲」「問題解決」の4因子、社会的資質因子として、「問題介入」「被受容的関係」「集団効力」「協同的問題解決」の4因子からなる尺度である。この尺度は実用に耐えうる尺度と考えているが、外的基準との相関や小学生を対象としたときの質問項目の妥当性に若干の課題が残っている。そこで,これらの課題に2023年度以降に取り組みを最終年度までに完成させて、学会誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、「児童生徒用協同学習定着度尺度」を開発し、2021年度に開発した「協同学習指導行動尺度」で測定される6つの指導行動を通じて,実際に教師が意図したスキルや能力が児童生徒に定着しているかどうかを確認できるようにすることが当初の予定だった。これについては7割程度まで進んだ。ただ、協同学習が定着することが、児童生徒の資質や能力にどういう意味を持つのかを明らかにする必要があると考え、当初は予定していなかった「包括的生徒指導尺度」の開発に取り組みんだ。こちらはいくつかの課題は残っているものの、おおむね完成に近いところまで開発が進んだ。これら二つの尺度が完成すれば、教師の協同学習における指導行動が子供にどの程度定着しているのかがわかり、それが生徒指導上、どのような意味を持つのかがわかることになる。その意味で、順境に推移していると考えている。ただ、完成しているわけではないこと,学会発表や投稿に至っていないことから,「おおむね」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2021年度に検討した協同学習における教師の指導行動と、2022年度に開発を開始しまもなく完成させる予定の「児童生徒用協同学習定着度尺度」、および2022年度におおむね完成に近づいている「包括的生徒指導尺度」を用いて、教師のどのような指導行動によって、児童生徒に協同学習上に必要な能力が身につくのか、またそうした協同学習を通じて身に着ける能力は、①パーソナリティ、②社会性、③学業、④キャリアの四領域の発達とどのように相関するのかを検討する。 また、その結果を踏まえて、「協同学習指導行動ガイドライン」を作成する。 なお,2023年度は研究的には総括の年度であるため,国家的に協同学習を導入しているシンガポールと,同じく広く協同学習を導入している香港を訪問し視察と協議を行うとともに,これまでの研究とその成果物の評価を受ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で学会等がオンライン開催になったため,旅費の支出がなくなったため。今年度以降は対面式の学会が予定されており,そこで使用する予定である。
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