研究課題/領域番号 |
21K02534
|
研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
水戸部 修治 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (80431633)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 小学校国語科 / 個別最適な学び / 一人1台端末 / ロングレンジの学習活動 / 授業改善 |
研究実績の概要 |
本研究では、我が国の小学校国語科の授業改善を進めるため、授業実践上の課題を明らかにし、その克服と更なる授業改善を推進するための具的な方策を提案することを目指し、1年次は、研究の全体的な構想を確定し、協力校への研究協力を依頼するとともに、各教科等の学習に機能する読解力の抽出とカリキュラムの全体的な枠組みに関する構想を進めることとした。そこで全体構想として、研究開発の重点を「国語科における個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指す授業改善方策の検討」に置くこととし、研究協力をいただく小学校との共同研究を進めた。その結果、本年度に得られた知見として次の2点を挙げることができる。 第1には、国語科における本質的なねらいを実現するためのICT活用の視点の明確化である。コロナ禍以降、GIGAスクール構想の下、小学校国語科の学習指導でも一人1台端末の利用が急速に普及した。一方で、端末を使うこと自体が目的化し、国語科のねらいとはかけ離れたものとなっている状況も指摘されている。そこで、研究協力校9校における10の実践事例分析を通し、国語科の指導のねらいを実現する上でのICTの利活用のための視点を明らかにした。 第2には、児童の自律的な学びを引き出す「ロングレンジの学習活動」の研究開発である。「個別最適な学び」がともするとICT活用のみの文脈で受け止められる状況も散見されるが、本来的には一人一人の学習者がより自律的に学ぶ姿を引き出す授業改善の視点が不可欠である。そのための効果的な手立てとして、学習者がゴールやその道のりを見通し、かつそのような学習を繰り返したり、授業者が交流の際の的確な手立てを取ったりすることで、一定程度の学習時間を、学習者自身が学習時間、学習内容などを最適なものに調整しつつ、対話や会話を頻繁に取り入れて学ぶ「ロングレンジの学習」が大きな効果を生むことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍において、学校を訪問しての授業研究・授業分析及び、具体的な作業を行うワーキンググループの実施は困難を極めた。また、ベルリン・ブランデンブルグ州立学校・メディア研究所との連携についても、コロナ禍のために訪問が難しい状況である。 一方で、研究協力校においては、授業改善による児童の向上的変容を実感いただいたことで、一層の授業改善への挑戦を続けていただいている。またコロナ禍以降、オンラインの研修が普及したことにより、移動時間を削減できたことに加え、事前の授業構想の検討がより充実したものとなっている。このことにより、国語科におけるICT活用のポイントの解明や、「ロングレンジの学習活動」の効果の検証などが進められたことから、おおむね順調であると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、「国語科における個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けた授業改善方策」について明らかにしていくこととする。 特に、第1年次に研究開発に着手した「ロングレンジの学習活動」の効果やその実施の際のポイントについて、実践事例を蓄積し、より実証的に明らかにしていきたい。 また、第1年次では実施できなかった対面作業を伴うワーキンググループを実施し、授業実践の視点を軸に、教育行政、学校経営、初任者指導等の多面的な視点からも検討を加え、より実効性のある授業改善システム構築を目指していくこととする。 併せて、各地域における授業実践情報の収集と分析、公立図書館調査を通した子供の読書活動の推進方策の検討を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、遠隔地等に訪問しての授業実践情報の収集、対面でのワーキンググループの開催ができなかったため、旅費を執行することができなかった。 次年度については、年度当初からワーキンググループ等を開催し、開発を更に加速させることとする。
|