研究課題/領域番号 |
21K02537
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
谷地元 直樹 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00826927)
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研究分担者 |
二宮 裕之 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40335881)
近藤 裕 奈良教育大学, 数学教育講座, 教授 (80551035)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 授業改善 / 授業力 / 問題解決の授業 / 授業研究 / 授業準備 / 数学教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,中学校数学科教師に内在する「授業力」を明らかにし,授業改善に取り組むための「授業改善モデル」の開発を行うことを目的とし,基礎研究並びに実践的研究を推進している。特に,学習指導法,数学科の専門性,さらには教師教育の三方面から中学校数学科教師の「授業力」をどう捉えるのかを検討するために,国内外の教師教育に関わる論考を踏まえ,数学教師の成長や熟達化のモデルについて検討を重ねている。2年次研究の主な成果は次の通りである。 (1)授業参観並びに事後インタビューの実施について 教師がもつ「授業力」を検討するために,北海道内の複数の教員(年代別)を対象に授業参観並びに授業後のインタビューを実施した。そこからは,教師に暗黙裡に内在する数学観や授業観を表出させることで,「授業力」の主たる要素を規定するに至った。特に,事後インタビューからは,「授業改善」のきっかけが自己のもつ数学観や理想とする授業像に影響を与えること,日々の授業づくりにおける指標の一部となることが明らかとなった。授業での教授行為は,学習指導法の枠内に収まる類似した取り組みが共通して行われている一方で,数学教師の「授業準備」に着目すると,各教師の裁量で実施されていることが確認された。 (2)「授業改善モデル」の具体化について 現段階では数学教師の「授業力」を「数学教師がもっている授業をつくる力」とし,授業実践の有無に関わらず備わっている能力と捉えることにした。一方で,数学教師の「実践的な指導力」を「授業の結果として,生徒がどう変容したのかによって図ることができる力」とし,他者によって観察可能な範囲で見取れる能力と捉えることにした。また,授業づくりを行う上での「授業準備」に特色があることが浮き彫りとなった。数学教師の熟達化とともに「授業準備」がどう変容するのかを分析・検討することが3年次以降の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年次計画では,本研究の研究研究代表者・分担者の当該地区となる3つの地域で研究グループを計画し,各地区での授業実践並びにインタビュー調査を実施する計画であった。しかし,コロナ禍の影響があり,北海道地区のみの授業研究会を開催することでとどまっている。また,2年目には,対面での研究会が実現できているため,3年目以降の研究の方針と計画を修正を図ることができている。 本研究を効率的に推進するために,オンラインで研究代表者・分担者打合せを3ケ月に1度実施することができている。また,mail会議を継続的に実施しているため,進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。 北海道地区の実践的研究の取組としては,3名の授業協力者に授業提供並びにインタビュー調査を行うことができている。なお,調査を実施した時期的な問題から,研究計画とは行る領域での授業実践となった。今度の計画の修正によって,4年間で全領域を網羅できるものと考えている。さらに,研究分担者らとアメリカの研究者とのインターネット会議にも定期的に参画することで,それぞれの国の研究者コミュニティーの中では見いだすことが難しい暗黙裡に内在する「授業力」についても検討をすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
3年度計画については,北海道地区での合同授業研究会を前期に実施する。また,関東もしくは関西地区での合同授業研究会を実施する予定である。対象となる領域としては,数と式領域(方程式)と図形(論証指導)の「同一授業」を計画しており,学習指導法,数学科の専門性,さらには教師教育の三方面から中学校数学科教師の「授業力」を検討する。 次に,数学教師を対象とした「授業準備」に関する予備調査並びに本調査を実施する。各地域の教員の調査データの分析をもとに,数学教師の熟達化のためのモデルを検討する。また,これまでの授業協力者に本モデルを適用することで,「授業改善モデル」の開発に接続していく。 開発した「授業改善モデル」については,4年次以降で各地域で検証授業を実践する。その再分析・再考察を踏まえて,本研究の成果を日本国内の中学校数学科教師に広く発信する予定である。 コロナ禍の影響を鑑みて,対面での研究会やオンラインを活用しながら,授業検討や授業視聴,研究協議など,可能な方法を模索しながら進めて行く方向である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響から,2年間で一度の合同研究会しか開催できていないこと,また,当初に予定していた各地区での合同授業研究会が実施できていないことが原因である。これらについては,3年目以降で順に研究会を開催する方向で計画を再構築している。本研究では旅費が多くを占めるので,最終年度までには予算を計画的に使用する見込みである。
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