研究課題/領域番号 |
21K02548
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
勝見 健史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (20411100)
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研究分担者 |
山本 智一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70584572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国語科単元学習 / 言語運用 / 主体的学習 / 自律 / アーギュメント |
研究実績の概要 |
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、国語科がめざす能動的な課題解決の学習(国語科単元学習)における言語運用プロセスの協働的解決の学習方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる協働的な学習プログラムを開発するものである。 当該年度においては、主に現行学習指導要領がめざす課題解決の言語運用プロセスを含む国語科単元学習、自律性学習、アーギュメントの学術的背景を確証するために、国内外の文献・資料の収集と分析を行い、アーギュメントの背景理論の理解と課題の共有化を図った。とりわけ、わが国のアーギュメント研究の現況と、国語科における科学教育のアーギュメント導入の可能性と限界性について、科学教育におけるToulmin(1958)のモデルが示すアーギュメントの構成要素のうち、「理由の裏づけ」を、国語科教育で援用する場合どのように位置づけるかについて可能性を検討した。 そこでは、第一に、単元組織における「真正性」の保障を児童の自律的な学びを促進するための前提となる言語運用の場の要件とすること、第二に、国語科教育における「理由の裏付け」として、認知的葛藤の発生場面で質問と説明を通した自問自答が論証の質の向上を向上させるという考え方(Chin&Osborne(2010))に着目すること、を学習プログラム構築における視座とする可能性を抽出した。 また、実践協力学校とは既に授業研究に関わって共同研究関係にあるが、改めて今回申請の課題についての協力の依頼を行い、自律的言語運用を促進する単元組織の方略について当該学校の実態を踏まえながら本研究の意義の共有化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、現在の国語科がめざす学習者主体の能動的な言語運用プロセスに協働的な解決方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる学習プログラムを開発することが目的である。 当該年度においては、国内外の文献・資料の収集と分析を行い、アーギュメントの背景理論の理解と、Toulminモデルが示すアーギュメントの構成要素のうち、国語科教育における「理由の裏づけ(Backing)」の在り方について検討を行い、実践を通したプログラム策定への視座が抽出された。 しかしながら一方で、実践協力学校はコロナ禍の状況下において、外部の人物との接触を極力回避することが継続されており、当該学校の授業協力者との継続的な打合せや教員からの情報収集が困難な状況にある。また、当該学校の日常の学習活動においては、教育課程の実施が困難な時期があった上に、その後も感染対策から対話的活動をできるだけ控えることが留意されており、協働的学習プロムラム策定プロセスにおける具体的な試行実践と検証、それに伴う対話的活動を内包させる単元の特定と実施の見通しが未だ流動的である。主体的学習における児童同士の協働的な解決方略を導入したプログラム開発を目指す本研究を進める上で、コロナ禍による学校教育現場の教育活動の制限は研究進展の停滞を招いている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2022 年度は、アーギュメントを位置づけた実効性のある協働的な学習プログラムの構築を図っていく。そのために、第一に、2021年度に焦点化した研究成果内容を手がかりとして言語運用の改善に働く論理的思考のあり方を検討し、言語運用プロセスにおけるアーギュメントの具体的内容と配置の仕方を明確化する。このことによって、学習プログラムとしての基本となる単元展開モデルを構築する。第二に、現在停滞している実践協力学校の授業者や教師集団との協議を進め、言語運用プロセスにおけるアーギュメントを活かした思考活動の内容と配置、教師の関与の方法について修正を重ね、公立小学校の一般的な学校教育現場で実現可能な学習プログラムとしての構築を行う。加えて、本研究の内容を、児童の自律性を重視する「学習のための評価(assessment for learning)」「学習としての評価(assessment as learning」の評価論に関わる文献執筆と連動させることにより、本研究の意義について広く啓発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ禍の状況下で実践協力学校は外部の人物との接触を極力回避することが継続され、当該学校の授業協力者との継続的な打合せや教員からの情報収集が困難な状況にあった。また、当該学校の日常の学習活動においては、教育課程の実施が困難な時期が長期に及んだ上に、その後も感染対策から対話的活動をできるだけ控えることが留意されており、学習プロムラム策定プロセスにおける具体的な試行実践と検証、それに伴う対話的活動を内包させる単元の特定が困難な状況であった。主体的学習における児童同士の協働的な解決方略を導入するプログラム開発を目指す本研究は、コロナ禍による研究進展の停滞を生じることなった。 2022年度は現在停滞している実践協力学校の授業者や教師集団との協議を進め、言語運用プロセスにおけるアーギュメントを活かした思考活動の内容と配置、教師の関与の方法について明確化(学習プログラムとしての基本となる学習モデル構築)する必要があるため、そのための情報収集の費用、旅費および実施・検証に向けた物品費等が必要である。また、本研究の内容を文献執筆による啓発と連動させる予定であり、その情報収集・打合せのための旅費および情報収集のための費用等が必要である。以上の点を実現するために、昨年度繰り越された助成金を有効に活用することが不可欠となる。
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