研究課題/領域番号 |
21K02550
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木下 博義 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20556469)
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研究分担者 |
山中 真悟 福山市立大学, 教育学部, 講師 (10845465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 批判的思考力 / 理科授業 / 指導方略 |
研究実績の概要 |
本研究では、理科における批判的思考力に関する先行研究を統合的に整理するとともに、教師の指導実態を調査し、教師主導と学習者主体を接合するハイブリッド型の指導方略によって、児童生徒に批判的思考力を獲得させる理科授業プログラムを構築・評価することが目的であった。たとえ無意識であったとしても、理科授業において児童生徒の批判的思考を促すような言葉がけや手立てを行っている教師の存在は予測されるものの、その詳細は明らかになっていない。そこで一年次では、まず、小・中学校で理科を担当する教師を対象に、指導実態の調査を実施することを計画した。次に、得られた結果を踏まえ、教師が批判的思考の有用性や方略を明示的に与える「導入アプローチ」を取り入れた指導法を考案し、小学校において実施することを計画した。 この計画にもとづき、選択式(項目数:40項目、回答方法:5件法)と自由記述式(項目数:1項目)からなる教師用質問紙を作成し、理科授業における批判的思考力の指導に関する実態調査を実施した。その結果、「多面的思考」「実証性の重視」など5つの因子を抽出することができた。この研究成果については、国際誌への投稿を予定している。 また、教師主体の「導入アプローチ」にイマージョン的要素を組み込んだハイブリッド型の指導法を考案し、試行調査を実施した。具体的には、小学校5年生「振り子の運動」の単元において、準備した「熟考ワークシート」を用いて教師が指導(教師主体の「導入アプローチ」しながら、児童の素朴な考えを生かした授業を展開(イマージョン的要素)する指導法を取り入れた。分析の結果、取り入れた指導法は児童の批判的思考力の育成に寄与したことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年次の計画は、主に次の3つであった。(1)小・中学校で理科を担当する教師を対象に、指導実態の調査を実施する。(2)教師が批判的思考の有用性や方略を明示的に与える「導入アプローチ」を取り入れた指導法を考案し、小学校において実施する。(3)自己報告式の尺度では対応できない思考態度に焦点を当てた新たな質的評価方法を開発し、試行する。 以上の計画にもとづき、教師を対象とした指導実態の調査を実施するとともに、小学校における指導の試行調査を実施した。当初予定していた「導入アプローチ」による指導のみならず、イマージョン的要素を組み込んだハイブリッド型の指導を試行できたことから、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1年次に予定していた質的評価方法を開発(自己報告式の尺度では対応できない思考態度に焦点を当てた新たな評価方法)が構想に留まっているため、研究を進める予定である。また、当初の予定である中学校における実践(小学校での実践を参考にして、「導入アプローチ」を取り入れた指導法を考案し、実施する)を進める予定である。 さらに、研究の成果を日本理科教育学会、日本教科教育学会等で発表するとともに、国際誌も含めて論文投稿することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、調査や学会発表の一部を中止した。次年度使用額については、調査経費や学会参加旅費として使用する予定である。
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