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2022 年度 実施状況報告書

批判的思考力育成のためのハイブリッド型理科授業プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K02550
研究機関広島大学

研究代表者

木下 博義  広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20556469)

研究分担者 山中 真悟  福山市立大学, 教育学部, 講師 (10845465)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード批判的思考力 / 理科授業 / 指導方略
研究実績の概要

本研究の目的は、理科における批判的思考力に関する先行研究を統合的に整理するとともに、教師の指導実態を調査し、教師主導と学習者主体を接合するハイブリッド型の指導方略によって、児童生徒に批判的思考力を獲得させる理科授業プログラムを構築・評価することであった。この目的を達成するため、一年次では、教師を対象とした指導実態の調査を実施するとともに、小学校において教師主体の「導入アプローチ」にイマージョン的要素を組み込んだハイブリッド型の指導法を考案し、試行調査を実施した。
一年次で得た結果を踏まえ、二年次では、児童主体でよりよい解の追究を行わせることをねらった指導法を考案し、実践と検証を行った。具体的には、授業で扱う題材にSTEAM 教育の要素を取り入れることによって、児童が課題に対して拡散と収束の思考を組み合わせながら批判的思考を働かせることを期待した。そして、第6学年「電気の利用」の単元において、プログラミングによって自動ブレーキの車を製作する活動を取り入れた。実際の活動としては、少人数グループで1台の車体とタブレット端末を使用し、交代しながら児童が考えた内容を順番に行わせた。また、動作確認を繰り返しながら車体やプログラムを改善していく必要があることや、自動ブレーキのためのプログラムとは別に、車の発進や停止を制御するプログラムが必要であることなどについても、適宜言葉がけを行った。
量的な分析のみならず、開発した質的な分析も導入して検証した結果、考案した指導法による授業実践によって、児童は試行錯誤する中で批判的思考を働かせ,課題を解決するためのよりよい車体やプログラムを主体的に追究できたことが明らかになった。この指導法は、教師主体の指導法と組み合わせることにより、単元を通したハイブリッド型指導方略を構築するうえで、重要な要素になるといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の二年次の計画は、主に次の2つであった。(1)一年次に行った小学校での調査に続き、中学校においても「導入アプローチ」を取り入れた指導法を考案するとともに、調査を実施すること、(2)自己報告式の尺度では対応できない思考態度に焦点を当てた新たな質的評価方法を開発し、試行する。
(1)については、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた中学校での本格的な調査を見送り、一年次に得た結果を踏まえ、再度小学校での調査を中心的に行った。しかしながら、協力の得られた中学校において予備的な調査を行い、三年次に向けての方向性を見いだした。(2)については、小学校における評価方法として、児童の記述や発話を用いる質的な分析方法を開発した。
今年度予定していた中学校での調査はできなかったものの、来年度については調査の目処が立っていることと、2年間にわたる小学校での調査結果を活かす利点もあることから、研究は概ね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

まずは、中学校における調査を早い段階で実施する予定である。そして、3年間の研究を整理し、小学校・中学校における「教師主導+児童生徒主体」のハイブリッド型の指導プログラムを構築する予定である。指導プログラムの具体としては、小学校・中学校それぞれ2から3単元での実施を検討している。さらに、研究の成果を国内学会および国際会議で発表するとともに、国際誌も含めて論文投稿することを計画している。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響により、調査や学会発表の一部を中止した。次年度使用額については、調査経費や学会参加旅費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 児童が保持する電流の素朴概念の明確化と科学概念への変容を支援するAR教材および指導法に関する一考察2022

    • 著者名/発表者名
      木下博義、岩﨑泰博
    • 雑誌名

      日本教育工学会

      巻: 46 ページ: 141-156

    • DOI

      10.15077/jjet.45068

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 小学校理科における教師主体の「導入アプローチ」による批判的思考力の育成-第5学年「振り子の運動」における児童の素朴な考えを生かした授業展開を通して-2022

    • 著者名/発表者名
      中山貴司、木下博義
    • 雑誌名

      日本理科教育学会

      巻: 63 ページ: 139-150

    • DOI

      10.11639/sjst.21079

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Teaching of Critical Thinking Skills by Science Teachers in Japanese Primary Schools2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroyoshi Kinoshita
    • 雑誌名

      Journal of Baltic Science Education

      巻: 21 ページ: 801-816

    • DOI

      10.33225/jbse/22.21.801

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中学校理科における探究的な学習と概念理解に関する研究-国際バカロレアの視点を取り入れて-2022

    • 著者名/発表者名
      靑木理恵、木下博義
    • 雑誌名

      臨床教科教育学会

      巻: 22 ページ: 1-13

    • 査読あり
  • [学会発表] Developing Decision-Making Skills in Junior High School Science in Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Koki Kuratomi, Hiroyoshi Kinoshita
    • 学会等名
      World Association of Lesson Studies international Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Understanding of Electricity Concepts among Junior High School Students in Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Seiki Fujihara, Hiroyoshi Kinoshita
    • 学会等名
      World Association of Lesson Studies international Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Students' Motivation to Learn in High School Science in Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Tao, Hiroyoshi Kinoshita
    • 学会等名
      World Association of Lesson Studies international Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 中学校理科における意思決定力の育成に関する実践的研究ー意思決定のプロセスに着目した指導を通してー2022

    • 著者名/発表者名
      藤原聖輝、木下博義
    • 学会等名
      第48回日本教科教育学会全国大会
  • [学会発表] 高等学校化学における生徒の学ぶ意欲に関する実践的研究ー実験計画の立案に焦点を当ててー2022

    • 著者名/発表者名
      田尾和輝、木下博義
    • 学会等名
      第48回日本教科教育学会全国大会
  • [学会発表] 中学校理科におけるエネルギー概念の理解を促すAR教材の作成と導入2022

    • 著者名/発表者名
      藏航航輝、木下博義
    • 学会等名
      第48回日本教科教育学会全国大会
  • [学会発表] 中学校理科における批判的思考の活性化に関する基礎的研究2022

    • 著者名/発表者名
      垰田夏輝、木下博義
    • 学会等名
      第71回日本理科教育学会中国支部大会
  • [図書] 小学校理科授業実践ハンドブック2022

    • 著者名/発表者名
      角屋重樹・林四郎監修、石井雅幸・稲田結美・木下博義・松浦拓也編、新井しのぶ他35名
    • 総ページ数
      356
    • 出版者
      教育出版
    • ISBN
      4316804634
  • [図書] 理論と実践をつなぐ理科教育学研究の展開2022

    • 著者名/発表者名
      一般社団法人日本理科教育学会編著、木下博義他52名
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      東洋館出版
    • ISBN
      4491049351

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公開日: 2023-12-25  

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