研究課題/領域番号 |
21K02559
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
曽山 和彦 名城大学, その他部局等, 教授 (50454418)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学校不適応予防・解決 / 短時間グループアプローチ / ペア・グループ活動 / かかわりの力 / ソーシャルスキル / 自尊感情 / ソーシャルスキル・トレーニング / 構成的グループ・エンカウンター |
研究実績の概要 |
本研究は、本申請者が開発(科研費17K04888;H29~R1)した「かかわりの力」育成プログラム(小中学校版)を元に、教師が日常的に活用できる「高等学校版」プログラム開発を目指している。同プログラムは「かかわりの力」構成要因として「自尊感情」「ソーシャルスキル」を想定し、それらの向上・定着に向け、(1)週1回10分の短時間グループアプローチ(○○タイム)実施、(2)各教科等における「ペア・グループ対話」導入の2本柱から構成するものである。 研究1年次(令和3年度)は、令和2年度、熊本県A高等学校(抽出3クラス)の実践から作成された「試行版プログラム」を活用し、兵庫県B高等学校(抽出4クラス)における実践、及びプログラム効果検証を行った。従来の研究同様、効果指標として「学級診断尺度Q-U」、「生徒自由記述」を設定した。 生徒自由記述には「仲良くなかった人と仲良くなるきっかけができて楽しい」「相手のことや自分のことを知れたり,自分に自信をつける材料になるのでとてもいい機会になった」等の感想が多く記され、「○○タイム」には「かかわりの力」促進効果があることが示唆された。しかし、Q-Uでは「友人関係」等の項目において統計的変容が認められなかった。その理由として、第一には「○○タイム」が不定期実施であり、一回一回が打ち上げ花火的な「お楽しみ活動」に留まってしまったのではないかということ。第二には「○○タイム」で大切にした「挨拶、話の仕方・聴き方、自他への気づき」がその時間のみで閉じられ、生徒に「馴染む」ところまで至らなかったのではないかということが推測された。高等学校における学校不適応予防・解決に向け、「○○タイム」がもつ可能性は見出されたと考えられるが、2年次には上述の課題に焦点を当て、新たな対象校による実践・検証を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の本研究の開始に当たり、当初予定では、令和2年度、本研究テーマに関するパイロット研究校であった熊本県A高等学校を引き続き対象校とし、抽出クラスを「5」に増やして実践・検証を行う予定であった。しかし、年度末の校内人事により担当教員が交代することとなり、研究への協力を受けることが難しくなった。そこで、数年前より本申請者が校内研修に出向いている兵庫県B高等学校を対象校として実践・検証を行うことに変更した。このように急な対象校変更はあったものの、抽出クラス(4クラス)での実践、及び、効果指標として設定した学級診断尺度Q-U、生徒自由記述のデータ収集は、当初予定通りに行うことができた。 研究1年次の成果は、第64回日本教育心理学会総会(2022年8月オンライン開催)において、「テーマ;高等学校における 短時間グループアプローチ実践と効果の研究」として発表予定である。さらに、2023年2月発刊予定の名城大学教職センター紀要論文に投稿するとともに、2023年6月発刊予定の単著;「スリンプル(スリム&シンプル)プログラムで『かかわりの力』を育てる! 週1回10分の○○タイムでソーシャルスキルと自尊感情を育てるプログラム」(ほんの森出版)にて紹介することを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年次(令和4年度)は、新たに対象校として2校を設定し、プログラム実践・検証を行う。1校は愛知県C高等学校である。C高校はヒューマンサービスを学ぶ専門高校であり、「かかわりの力」育成に焦点を当てた本研究がうまくマッチするのではないかと考えられる。もう1校は大分県D高等学校である。大分県は、本申請者の提言する「かかわりの力育成プログラム」を参考に「人間関係づくりプログラム」を作成し、令和3年度より県下の全小中学校・高等学校にて実践を展開している。それ故、D校の協力は得やすく、共にこれまでの実践知見を寄せ合い、よりよいプログラム構築ができるのではないかと考えられる。効果指標は、前年度同様、学級診断尺度Q-U、生徒の自由記述を用いる。また、コロナ感染の状況次第だが、可能であれば、両校には、年間2~3回訪問し、実践の様子を参観すると共に、管理職・実践推進担当者との協議を実施し、プログラム推進上の課題等を確認しながら進める。 本研究の最終年となる3年次(令和5年度)は、新たな対象校を1校加えることができれば、と考えている。その実践・検証及び、研究のパイロット校であるA高等学校も含む5校の実践データの検証により、「高等学校版 かかわりの力育成プログラム」を整理・開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1年次(令和3年度)の経費として計画していたのは物品費(ノートパソコン)、旅費、 その他(QU分析費用)であった。データ分析は、当初、QUを予定していたが、hyperQU(QUのバージョンアップ版)に変更したため、予定額を上回る支出となった。しかし、その分、コロナ禍の状況も考慮し、対象校訪問を減らすことで調整し、おおよそ、予定通りの経費使用となった。1年次の経費残額については、次年度計画している対象校訪問の旅費に上乗せして、訪問回数を調整することとする。
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