研究の最終年度(3年次、令和5年度)は、昨年度より対象校指定した2校(愛知県立C高校、大分県立D高校)に対して、引き続き「試行版かかわりの力育成プログラム」を実践し、質的・量的データ収集を重ねた。その結果、特にD高校の実践が全校体制として整い、生徒の学校適応状況が良好であることが明らかになったことから、これまでに収集した対象校(D校を除く3校)データと比較・分析を行った。本研究の目的は、教師が日常的に活用できる「高等学校版かかわりの力育成プログラム」の開発であり、既に開発済みの「小中学校版」プログラム同様、「週1回10分の短時間グループアプローチ(○○タイム)」「各教科等における『ペア・グループ対話』(○○トーク)」の2本柱を想定し、研究実践を行ってきた。対象校の教師から挙がった声として多かったのは「実施時間確保の難しさ」である。この声に最も効果的に応える形を生み出したのはD校である。D校は「月2回、水曜日の清掃をカットし、その時間に○○タイムを実施する」という方策が奏功し、生徒の学校適応状況も実践進行に伴いプラス変容を示した(客観指標としてアンケートQ-U活用)。D校の実践とその成果については日本教育心理学会におけるポスター発表(2023.2024)、単著:「超多忙でも実践できる!スリンプル・プログラム~週1回10分間の『○○タイム』で『かかわりの力』を育てる」(ほんの森出版.2023)、名城大学教職センター紀要第21巻(2024)にて紹介した。3年間に及ぶ対象校の協力があったからこそ「高等学校版かかわりの力育成プログラム」の一つのモデルを構築することができたと考えている。コロナ禍を経て、生徒の不適応状況が悪化の一途をたどる学校現場の状況において、本研究の成果である「かかわりの力育成プログラム」は生徒支援の具体方策の一つになるのではないかと考えられる。
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