研究課題/領域番号 |
21K02560
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
横山 真理 東海学園大学, 教育学部, 准教授 (70784601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 「構成活動」を原理とした音楽科授業 / 学習プログラムの開発 / 個のイメージの再構成 / 社会的相互作用 / 学習環境要因 |
研究実績の概要 |
本研究では、学習者同士が言語的、非言語的なコミュニケーションをとりながら関わり合って学んでいる音楽表現の過程を分析し、社会的相互作用が音楽表現の過程における個のイメージの再構成メカニズムに及ぼす影響を解明する。それにより、「構成活動」を原理とした音楽科授業における個のイメージの再構成メカニズムを社会的相互作用の影響を考慮した授業諸要因の関連構造モデルとして構築することを、研究の目的としている。 初年度の計画は、①先行研究レビュー、②仮説モデルの設定、③音楽科授業の学習プログラム案の作成、それに基づいて実践された研究授業の参与観察と記録の収集であった。今年度の研究成果は、以下の学習プログラムを研究協力者(研究授業の実践者)と協働開発し、授業分析のための記録を収集することができたことである。 1.表現領域創作分野の単元「音色を意識したイメージを表現する音楽創作」(中学1年)。2.表現領域創作分野の単元「箏の奏法と音色を意識したイメージを表現する音楽創作」(中学1年)。3.鑑賞領域の単元「歌と伴奏の重なりを意識した《魔王》の批評」(中学1年/高校1年)。4.表現領域歌唱分野の単元「アーティキュレーションを意識した《箱根八里》の表現の工夫」(高校1年)。5.表現領域創作分野の単元「コード進行を意識した生活感情を表現する歌の創作」(高校1年)。6.表現領域創作分野の単元「箏の奏法と音色を意識したイメージを表現する音楽創作」(高校1年)。7.表現領域器楽分野の単元「声部の役割を意識したギターユニットによる《Stand by me》の表現の工夫」(高校1年)。 以上の研究授業の記録を分析する過程で、音楽に対する個のイメージが他の学習者との関わり合いの影響を受けながら変容する過程において、学習者間の社会的相互作用を触発する学習環境のあり方が重要な要因となっていることがわかってきてた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者と学習プログラム案について具体的な検討を重ねながら、学習者同士が活発に関わり合って学びながら思考・イメージ・感情を充実させていくことを意図した音楽科授業の学習プログラムを多く開発することができた。これまで研究協力者として協働で授業研究を進めてきた教諭以外に、研究授業を実践する教諭が研究協力者として新たに加わり、複数の研究協力者と協働で授業研究を推進することでできるようになった。それにより、個のイメージの再構成がどのような社会的相互作用の影響を受けているのか分析するに値する授業実践記録を十分に収集することができ始めている。また、今年度の研究過程でわかってきた学習環境要因の重要性についての理論的検討と授業分析を行い、その研究成果を学会研究大会の口頭発表や査読付き論文として公開することができた。以上のことから、本研究は概ね順調に進んでいると言える。 一方、本研究課題に関わる仮説モデルの設定については曖昧なままになっていることから、今後の検討課題として次年度に引き継ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の課題として残された仮説モデルの設定について次年度早々に検討しする。そのために、先行研究や文献レビューを通して思考・イメージ・感情など個の精神活動と社会的相互作用の影響の関連に関して理論的検討を深めたい。特に、音楽表現の過程で1対1を超えた多様な学習者同士がどのように言語的な媒体(擬音語・話し言葉・書き言葉など)や非言語的な媒体(身体動作・色や形・口ずさみ・音や音楽など)を組み合わせながらイメージを伝え合い、その結果として個のイメージがどのように再構成されていくのか、音楽科授業実践の分析に基づく研究が乏しいためよくわかっていない。そこで次年度も、継続して研究協力者と協働で学習プログラム案を作成しながら、それに基づいて実践される授業の参与観察を行って授業実践の諸記録を収集し、分析視点を定めて授業分析に取り組みたい。同時に新規の試みとして、学習者同士の関わり合いのない状況下での教師と学生による音楽演奏の個別レッスンの授業実践の諸記録を収集して授業分析を行い、比較検討の分析資料を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は5,070円であるが、少額であるためいかなる項目においても必要な支出が不可能であったためである。したがって、この金額については次年度の助成金と合算し年度当初に必要な学会全国大参加費などに充当する。
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