最終年度の研究の成果は,主なものとして2つが挙げられる。まず,「韓国科学創意財団webサイトに集積されたSTEAM実践事例の分析」では,事例が6つに類型化されており,それらの特徴を明らかにすることとした。このうち,生物領域に焦点化すると,学問分野主題別融合型,先端製品活用型,科学人文芸術融合型,未来職業連携型に実践事例が見られた。最近の小学校(初等学校)の授業実践の一例として,科学人文芸術融合型「360度の映像で絶滅の危機の動物たちの幸せな生態空間づくり」を見ると,記事などでイメージを掴み,班別の思考を伴う活動や発表を行い,動物保護のための仮想生態系空間を設計し,自己評価や他者評価を行っていた。このような活動形態はどの類型でも行われており,類型別に活動の差はなく,どの実践事例も授業のあらゆる場面で活用が可能であると言える。次に,「韓国の理科教員養成・理科授業の分析」では,国立公州大学校師範大学(教育学部),礼山市の徳山中学校の授業を分析した。教育学部の理科授業は,日本でもよく実施される,学生が指導案を作成して模擬授業を行うものであった。中学校の理科授業は,STEAM教育の手法を活かしており,人間の内臓を班で1つ選択して調査して発表し,聞き役の生徒が段階評価を行う相互評価が実施されていた。 研究機関全体を通じた研究の成果として,主に小学校と中学校のSTEAM教材について実践事例を調査できたことが挙げられる。これらは教科書の記載や前述のwebサイトからの情報が主であったが,それらの内容,授業形態,授業展開を具体的に分析することができた。また,以上の成果をもとにして,日本に導入しやすいSTEAM教材を構想することができた。たとえば,理科と技術科を融合した「イチゴの生育条件」について思考させる授業展開や,理科と体育科を融合した「各種の発電所をスポーツ集団に例えると」が挙げられる。
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