研究課題/領域番号 |
21K02571
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
和田 一郎 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (70584217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 理科授業デザイン方略 / 自己調整学習 / 社会的文脈 / メタ認知 |
研究実績の概要 |
新たな小学校学習指導要領(理科編)では、問題解決活動を通じて新たな資質・能力の育成が目指される。中でも、急激な社会構造の変化の中で、予期せぬ新たな問題に直面した際、それを主体的・協働的に解決できる力の育成が強く要請されている。そうした力の育成に関わり、これまで申請者は、調整学習の立場から研究を推進してきた。特に、自己と他者の相互作用までを考慮した、Hadwinら(2011)が指摘する3種の調整学習の概念(自己調整、共調整、社会的に共有された調整学習)に着目し、これを理科学習の立場から概念比較し、その内部構造を明らかにしてきた。本研究では、これらの調整の内部構造の構成に関わる認知・情意変数に着目し、各調整の移行過程とその関連性を精査することを目的とする。 今年度は、まずHadwinの理論を援用して、まず調整学習に関わる変数と各調整タイプとの関連を、「認知」、「メタ認知」、「動機づけ」の3種の変数から理論モデルを構築した。この中でも、調整学習における子どもの認知面の変容を詳細に捉えることは難しい。そこで、本研究ではAireyら(2009)の指摘に基づき、思考の実態である表象の流暢性の側面から検討を行った。これによって、小学校理科の問題解決過程における子どもの思考の変容を可視化し、調整学習の過程における子どもの認知の調整の実態をより具体的に捉えることが可能になったと考えられる。また、認知を俯瞰する機能であるメタ認知の実態を明確化するために、これまでに検討の進んでいるメタ認知の活動成分に加え,様々な定義が提唱されている知識成分(メタ認知的知識)についても具体化した。特に,初期の認知研究に基づくFlavell(1979)の定義と,その後の認知心理学の発展により台頭したSchraw(1995)の定義に基づき,理科学習の立場から整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、Hadwinの理論を援用して、まず調整学習に関わる変数と各調整タイプとの関連を、「認知」、「メタ認知」、「動機づけ」の3種の変数から理論モデルを構築することを目指した。結果として、これらの変数が、共調整では目標に向けて個人と他者の変数が相互作用し、目標変数の構成に向けて学習が調整されること、社会的に共有された調整では、複数の個人の変数と他者の外的変数とが複雑に関連付いていくことになることを理論的に明らかにした。理科において、こうした3変数が各調整学習の過程でどのように個人内と他者内で機能しているのかを、モデル化した。さらに今年度の研究では、特に認知面の変容を詳細に捉えるため、表象の流暢性の観点からその実態を明らかにすることができた。さらに、認知を俯瞰する機能であるメタ認知の実態を明確化するために、この活動に関わる知識成分(メタ認知的知識)についても明確化した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目では「認知」、「メタ認知」、「動機づけ」の3種の変数から構築した理論モデルに基づき、小学校および中学校理科の授業実践の事例分析を行う予定である。また、事例分析を通じて、各調整の相互関連に関わる変数の評価方法についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表を計画していた学会の全国大会等がオンライン開催となったため,旅費に余剰が生まれた。次年度の学会等の開催形式は未定であるが,調査データの収集等での旅費が必要なので,それらに充当する予定である。
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