研究課題/領域番号 |
21K02573
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
清水 宏幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80562446)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文字の理解 / 文字式の理解 / 式をひとまとまりとみる |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,学校数学において,文字式を活用して問題解決を図る場面で生徒がどのようなところにつまずき,困難を感じているのかを明らかにするとともに,その生徒の理解に基づき,文字式を活用して問題解決を図る学習指導を提案することである。 本研究の2年目である,令和4年度は,前年度に実施した,高校生調査の結果の分析を行った。この調査では,文字式の理解とその式における文字の理解の中で,特に,文字式をひとまとまりと見ることに焦点を当てている。これは,中学生調査において被験者の誤概念が顕在化している箇所である。そこで,本調査では,3つの項をもつ文字式を1つの数に置き換えて値を求める問題と,過不足の問題を1次方程式に現した際に,両辺を表す数量を説明する問題の2問を取り挙げて分析している。高校生でも中学生で現れている誤概念が継続しているのか,あるいは,解消していくのかを明らかにするためである。さらに,この他に高校生の文字式に対する認識も顕在化しており,これらを明確にするために分析を進め,論文作成を目指している。この論文は学会誌へ投稿することを予定している。 分析については,東京学芸大学の西村圭一教授,北海道教育大学の榎本哲士准教授,東京学芸大学附属小金井中学校の中逸空教諭と定期的に文字式研究会を行って検討をしており,議論を重ねて分析を検討してきた。現在,論文にまとめている最中である。 また,この後,小学生に対して行う,調査問題についても検討しており,中高で開発した問題を参考に作成し,次年度の調査実施を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,本研究課題において,文字式を活用して問題解決を図る場面で生徒がどのようなところにつまずき,困難を感じているのかを明らかにすることを目的とし,文字式とその式における文字の理解を顕在化するための問題を開発し,実施に調査を行うことを目指して取り組んだ。調査結果についても分析を進めており,この成果をまとめる段階まで来ている。また,今後,小学生の調査も検討しており,本研究会の進捗状況ついては,概ね順調に進んでいると考える。 ただ,新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,インタビュー調査を実施できなかったり,イギリスに渡航し,研究者との情報交換を行うことができなかったりしているが,国内の研究者とは定期的な文字式研究会をオンラインで継続して開催しており,調査結果の分析について意見交換しているので,研究としては順調に進んでいる。イギリスの研究者とは,令和5年度において,コロナの状況を見ながら,実際に渡航して研究会を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,本研究の最終年度となるため,高校生についての調査結果をまとめ,論文にして発表することをおこなう。そして,文字を最初に学習する小学生に焦点を当て,調査を実施することで,小,中,高を通した文字式とその式における文字の理解の,特に,式をひとまとまりと見ることに対する児童生徒の認識の一端を明らかにしたい。今後は,現在検討している,小学生に対する調査問題を作成し,山梨県内の小学校を選定した上で,調査を実施する。この問題作成に当たっては,文字式研究会で研究者の意見を踏まえながら問題を確定する。調査対象校については,国立大学附属小学校と公立小学校2校での調査を予定している。結果の分析については,質問紙調査を中学校,高等学校の理解と比較しながら,系統性を踏まえて行う。コロナの状況を見て,インタビュー調査の実施を検討する。 3年目の令和5年度には,1年目,2年目で行った調査結果から得られた児童生徒の文字式に対する課題を明らかにし,それを系統的に分析し,そのつまずきを克服しなおかつ文字式を活用して問題解決を図る教材を検討し,実際に授業実践を行う。最終的には,その授業の検証を行い,児童生徒から得られたデータを分析することにより,学習指導への示唆を得て,報告書にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度も新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,イギリスへの情報収集のための渡航ができず,主に旅費が思うように消化できなかったので,その経費を次年度に繰り越した形となっている。
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