研究課題/領域番号 |
21K02581
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中城 満 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (80610956)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 理科問題解決学習過程 / 問題の型 / 原理追究 / 活動目的 / 型ごとの指導法 |
研究実績の概要 |
研究二年度にあたり、一年目に引き続き研究対象とする理科授業実践記録の収集に努めた。そして、本研究仮説に基づき、収集した授業記録をプロットデータ化した上で 「原理追究型」「活動目的型」「その他」に分類した。一年目に収集した21件に加え、2022年度においては、小学校理科授業32件、中学校理科授業10件、合計42件のデータを収集することができた。これら42件について、様々な観点から分析を行った。その観点とは以下のようなものであった。 それは、①理科の4領域における問題の型の傾向、②小中それぞれの問題の型の傾向、③問題解決の各過程における整合性のずれの実態と問題の型の傾向、であった。
①においては、理科の4領域(エネルギー・粒子・生命・地球)のうち、粒子領域において、「原理追究型」の問題設定が多いことが明らかとなった。これは、条件制御を伴う実験による問題解決が行われる学習内容が多いことがその主な要因であると考えられた。②においては、小学校において「原理追究型」が多い傾向にあり、中学校においては型による違いは認められなかった。③においては、「原理追究型」で大きな整合性のずれの認められる授業はほとんどないのに対して、「活動目的型」の授業では整合性のずれが多く認められた。これは研究仮説において指摘した、児童生徒の問題解決に対する見通しが明確であるかないかが大きな要因であると考えられた。しかし、「活動目的型」においても、問題解決が円滑に行われた授業も見受けられたことから、教師の介入すべきタイミングなどが適切に導入されることの重要性も明らかになった。 今後は、以上の点を踏まえ、さらなる類型化の可能性を探ると共に、「原理追究型」「活動目的型」それぞれの特性とその指導の適切な在り方を明確にしたうえでそれぞれの型の一般的モデル授業の詳細を明確にしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由 2021年度内に21件収集した本研究に関連する授業記録実践事例について、本年度はさらに42件追加することができた。これらの授業内容、その授業で使用された指導案を分析し、本研究における問題設定の「型」のいずれかに分類することができた。その内訳は、「原理追究型」が26件、「活動目的型」が15件であった。理科の4領域(エネルギー・粒子・生命・地球)ごとに問題の型を分類すると、粒子領域において、「原理追究型」が多いのに対して「活動目的型」が少ない傾向が示された。 これらの傾向から考えられるのは、「原理追究型」が問題解決を容易に成立させることができる問題設定であるということである。つまり、問題設定の段階から、解決の見通しが明確に立てられることによって、無理なく問題解決の過程を成立させることができることがその主な要因と考えられる。ただし、このことが直接的に児童生徒にとってよりよい理科の問題解決に当たるということではない。「原理追究型」が学習過程の初期の段階において、児童生徒に抽象的な内容の判断を迫るのに対して、「活動目的型」がより具体的な、日常生活などに即した内容を提示することが可能となる。そのことにより、児童生徒はより具体的な内容を思考対象とすることができる。このような「活動目的型」の有効な点をふまえた授業実践とその効果を明確にすることも今後の課題と考えている。本研究の到達点は、どちらの型が優れているかではなく、それぞれの型をいかに活用するか、そしてその手法は何かを明らかにすることである。この点が今後の課題となると考えている。 本研究の分析における成果とその関連する成果は、日本理科教育学会四国支部大会において3件発表され、その妥当性を検討する場を得た。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は研究の最終年度となる。したがって、これまで蓄積してきた授業データをさらに追加したうえで、問題の型ごとの傾向を明確にするとともに、それぞれの型の指導法を明確にすることがその大きな目的となる。この2年間の分析を通して、「真理追究型」の設定が多くの授業で取り入れられていることが明らかとなった。これはこの型のおおきな利点であり、その理由をさらに明確にすることによって、この型の適切な導入の方法が明らかになると考えている。一方で、「活動目的型」の設定があまり用いられないのは、いくつか要因が考えられる。その一つが「授業後半で教師の強い介入を必要とする」ということである。しかし、その介入が適切に無理なく行われれば、この型のよさは十分発揮されると考えている。そのような明確な意図をもって行われた授業記録はこれまでになく、この型の少なさが目立ったが、それぞれの型の指導の在り方を明確にするためには、前述のような授業を意図した実践授業の実施も必要となると考えている。 最終年度に臨むにあたり、それぞれの型の傾向を明確にした指導者による授業実践を試行し、それぞれの指導のモデルを構築していきたいと考えている。
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