研究課題/領域番号 |
21K02598
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
金子 康子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30194921)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 絶滅危惧植物 / 水生食虫植物ムジナモ / 生物多様性 / 環境汚染 / 外来生物 / 環境教育 |
研究実績の概要 |
埼玉県羽生市宝蔵寺沼が国内最後の自生地となった、稀少な水生食虫植物ムジナモの消長をめぐり、過去から未来につながる時の流れの中で、関連する多様な環境問題を多面的・複合的に扱う環境教育の教材を作成することを目的としている。かつて掘り上げ田であった宝蔵寺沼のムジナモは高度経済成長期でもあった1960年代の環境変化により激減し、その後約半世紀にわたり野生絶滅状態が続いた。2009年より開始された緊急調査を経て、埼玉大学、羽生市ムジナモ保存会、羽生市教育委員会が協力して活動を続け、宝蔵寺沼に数十万株のムジナモが繁茂する環境を復元することができた。 今年度は、ムジナモが野生絶滅に至った経緯を調査し、また、ムジナモが生育できる環境の復元に至った要因について考察を重ねた。さらに、1960年以前にムジナモが繁茂する宝蔵寺沼を記憶している地元の関係者からもかつての宝蔵寺沼の様子についての情報を収集した。第2次世界大戦後導入された除草剤や化学肥料が水質変化の主要因であり、それによって宝蔵寺沼に生育する生物相に多大な影響を及ぼし、かつ長期間にわたって土壌にその影響をとどめた経緯を明らかにすることができた。その後、宝蔵寺沼にはウシガエルの幼生やアメリカザリガニなどの外来生物が異常繁殖し、生物間のバランスは崩壊し、水路における水生植物の生育は困難な状況が続いた。緊急調査以降、これらウシガエル幼生やザリガニの駆除を継続したこと、また、自生地の陸地化した水路を掘り直すことによって多様な生物が生育できる環境を造成したこと、によってムジナモの生育が可能となった。2021年には羽生のムジナモ発見100周年となり、羽生市において記念事業が実施された。同時に開催された講演会は、宝蔵寺沼ムジナモ自生地がひとたび崩壊した後復元に至った道のりについて広く一般市民を対象に説明する機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定したムジナモが絶滅に至った経緯の調査と、宝蔵寺沼自生地におけるムジナモの繁茂が復元した要因を精査することができた。自生地に生息する多様な生物の記録も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得た成果をもとに、学校現場で活用することのできる魅力的な教材としてまとめていきたい。作成した教材を用いた授業を実施し、児童・生徒の反応をもとに改良を重ねていきたい
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催になり、旅費を要しなかったことと、人件費の支出がなかったため。次年度の学会参加旅費、謝金として使用したい。
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