研究課題/領域番号 |
21K02603
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
後藤 太一郎 三重大学, 教育学部, 特任教授(教育担当) (90183813)
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研究分担者 |
松本 金矢 三重大学, 教育学部, 教授 (10239098)
西村 有平 三重大学, 医学系研究科, 教授 (30303720)
荻原 彰 三重大学, 教育学部, 教授 (70378280) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生命教育 / メダカ / 心臓 / モバイル顕微鏡 / ICT |
研究実績の概要 |
本研究は、学校教育課程における小型魚類の飼育観察をもとに探究的なプログラムを開発し、実験動物を用いたデータの取得と客観的な分析に基づいた「人体に関する学習」の教育的効果を検証し、新たな生命教育プログラムを提案することを目的としている。 今年度は、①メダカ稚魚を用いた心臓拍動に関する実験の開発、②教員研修での紹介、③メダカ稚魚を用いた心臓拍動を取り入れた小学校および高校での授業実践、および、④海外におけるメダカ胚の観察に関するワークショップの実施を行った。 開発したモバイル顕微鏡を用いることで、メダカ稚魚の心臓を観察することができたことから、すべての校種でメダカ稚魚を用いた心臓拍動の観察・実験を行うための条件について検討した。稚魚を入れるチャンバーを工夫し、観察に適したサイズを調べたところ、体長6~9mmほどで、拍動と血流を明瞭に観察できた。また、心臓の拍動調節を調べるために、アセチルコリンやアドレナリンの投与、およびアドレナリン受容体遮断薬であるプロプラノロールによる拍動の変化を調べ、適切な濃度を求めた。 これらの実験結果をもとに、小学校における授業実践として、「メダカの胚と稚魚ではどちらの心拍数が多いか」をテーマとして行った。予想、観察、考察から、児童が心臓の働きを理解し、ヒトの心臓に興味が発展した。また、高校における授業実践では、神経伝達物質による心拍数の変化を確認することができた。授業の様子や実践に用いたワークシートの記述の分析の結果から、メダカ稚魚の拍動調節実験について肯定的な意見が多かった。しかし、稚魚の取り扱いに馴れていないことから、観察チャンバーに稚魚を入れる過程で稚魚を弱らせてしまうこともあった。授業実践から、動物の生命活動の定量的な観察実験による具体的かつ詳細な分析過程を取り入れる実験であり、児童生徒が現実感をもって取り組むものであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請書において示した当該年度の研究計画に沿って研究が進んでいる。すなわち、①メダカ稚魚を用いた心臓拍動に関する実験の開発、②メダカ稚魚を用いた心臓拍動を取り入れた小学校および高校での授業実践、および、③海外におけるメダカ胚の観察に関するワークショップを実施した。成果の一部は、学会発表や論文発表を行うとともに、授業実践はオンラインで紹介されている。また、オークランド大学を訪問する機会があったことから、オークランド大学教育福祉学部における教員研修センターであるKohia Centerの主事であるVijay Bhagwandhin氏の協力を得て、モバイル顕微鏡を用いたメダカの胚の拍動観察を紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
小学校や高校で実践した授業における課題となった「メダカ稚魚の取り扱い」について改善し、今年度も小中学校および高校での授業実践を行い、児童・生徒の体内構造に関する理解と生命教育に関する関心を調査する。また、教員研修における紹介を通じて、ICTを活用した観察記録と授業づくりの提案を進める。 さらに、海外での紹介として、昨年度行ったオークランド大学教育福祉学部における教員研修センター、および交流実績のあるホーチミン市師範大学のSTEAM教育センターでメダカの胚発生と仔魚の心臓拍動の観察に関する研修を行い、成果を海外に普及する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で計画している海外における教員対象のワークショップが渡航制限などにより遅延し、実施することができなかった。2023年度に実施する予定である。
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