研究課題/領域番号 |
21K02608
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
大門 俊樹 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (80594647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中高生 / 自殺予防教育 / 大学生ゲートキーパー / SOSの出し方に関する教育 / SOSの受け取り方 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学生ゲートキーパーを関与させた中高生自殺予防教育プログラムの構築を目的としている。3年目である令和6年度は、学内における年間を通したゲートキーパー養成の取り組みに力を入れてきた。 6月に、ゲートキーパー養成サークル「心のブランコ」を、14名の学生とともに設立し、毎週実施するミーティングを通して、学生主体で、継続的なゲートキーパー養成に取り組んできた。同月より、従来の実行委員会体制から、サークル主体による心のブランコ(大学生ゲートキーパー養成ワークショップ)の企画・運営を開始し、9月30日(土)に第1回ワークショップを開催し、17名の参加があった。第1回ワークショップでは、講義(いのちを支える-コミュニティとしての大学)に始まり、ゲートキーパーとしての基礎知識やサークルメンバーが作成したシナリオロールプレイなど、身近な内容を通した入門編として実施した。 3月23日(土)実施の第2回ワークショップは、本年度も中級編と位置づけ、ゲートキーパーとしての基礎知識に始まり、講義(直前のサインとは?)を受けたうえで、SNSを通したSOSのサインを受け取った時にどう対応するかについて、サークルメンバーの議論を重ねて作成したシナリオなどを用いて実施した。 9月16日(土)~17日(日)には、日本自殺予防学会にて、「福祉系大学における大学生ゲートキーパー養成の取り組み~5年間の心のブランコ開催を振り返って~」と題してポスター発表を行い、参加者間で活発な議論を行った。 学校教育現場においては近年、「SOSの出し方に関する教育」の必要性がより強く叫ばれており、本研究ではこれまで、「SOSを受け取る存在」としての大学生ゲートキーパーの養成を最優先の課題として取り上げてきた。令和5年度については、サークル設立により、恒常的な取り組みとなることが期待され、大きく前進したといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画のうち、学生向けワークショップ(通称:「心のブランコ」)による大学生ゲートキーパーの育成については、実施6年目を迎え、内容も充実し、成果を上げることができている。ただ、新型コロナウィルスの影響もあり、学内における自殺予防教育に関わる恒常的なグループ化が遅れ、令和5年度のサークル設立によりようやく緒についたところである。そのため、効果的な自殺予防教育プログラムの作成については、現在取り組んでいるところであり、学校教育現場での試行までは今しばらく時間を要すると思われる。 自殺予防教育とSSW(仮称)研究会(セミナー)についても、スクールソーシャルワーカーとの連携や情報収集は継続して行っているものの、令和5年度については、ゲートキーパー養成と学内の組織化に力を注いだため、研究会実施までには至っていない。 日本とともに自殺大国である韓国における自殺予防教育に関する情報収集と、学校社会福祉の実践者・研究者との連携については、現在、韓国学校社会福祉士協会関係者とのリモート会議などにより、双方の情報交換・議論を継続して進めているところである。 新型コロナウィルス感染症の影響により数年来制限されていた両国間の往来も元に戻りつつあるなかで、研究課題に関わる韓国への視察や現地での情報収集について、今年度は実施に向けて検討してまいりたい。 令和3年度からの継続課題であるSOSの出し方に関する教育と自殺予防教育の概念整理、大学生ゲートキーパー関与の検討については、学内の組織化をさらに積極的に行いながら、計画的に進めてまいりたい。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、3年次の計画については、やや遅れているところであるといえる。大学生ゲートキーパーの育成については、引き続き、「SOSの受け取り方」に焦点を当て、令和6年度については、サークルでの恒常的なゲートキーパー養成に加え、これまで継続してきた年2回のワークショップの開催に継続して取り組み、更にレベルアップに努めたい。内容的には中級編から応用編への発展を模索するとともに、中高生自殺予防教育プログラムへの活用も積極的に検討してまいりたい。令和6年度については、自殺予防対策全般の情報収集及び研究を更に進めながら、サークルメンバーとの議論を深めつつ、大学生ゲートキーパーが関与した中高生自殺予防教育プログラムの作成・試行に取り組んでまいりたい。また現在、SSWerを通して、東京都内の数校と連携を図っており、プログラム試行に向け、さらに連携を深めてまいりたい。 2年次に開催予定であった「自殺予防教育とSSW(仮称)研究会(セミナー)」についても実施までには至っていないが、まずは小規模からであっても、実施に向けて動いてまいりたい。 韓国における自殺予防教育に関する情報収集と、学校社会福祉の実践者・研究者との連携については今年度も継続する。令和6年度については、両国間の往来もようやく元に戻りつつあるため、研究課題に関わる韓国への視察と情報収集について、年度内に実施できるよう取り組んでまいりたい。 本研究の基盤となるSOSの出し方に関する教育と自殺予防教育の概念整理、大学生ゲートキーパー関与の検討についても、これまで以上に計画的に進めてまいりたい。 最後に、昨年度と同様に、日本自殺予防学会での発表に加えて、同学会誌への投稿についても検討するとともに、他の関連学会での発表・投稿についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度について、所属する日本自殺予防学会も全面的な対面による開催となったたことから、大分大会へ参加し、学会発表を行ったため、国内旅費が発生した。しかしながら、海外調査や打ち合わせについてはいまだ慎重となっていたため、海外旅費については未使用となった。そのため、海外での調査協力者への謝金も生じていない。その代わりに、科研費購入をしたプリンター関係費用や、学会発表用のポスター作成費用などに充てているが、上記金額が未使用となっている。令和6年度については、新型コロナウィルス感染症をめぐる状況も好転していることから、海外での調査も積極的に検討し、国内調査、各種学会への参加、関係者との打ち合わせとともに、適切かつ効果的に経費を使用してまいりたい。 また、令和5年度については、科研費を使用しての図書購入を見送ったが、令和6年度については、再び関係図書購入のために経費を使用してまいりたい。同時に、資料収集時に使用するためのファイルなどの文具類、通信費、複写費等についても、適切に使用してまいりたい。
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