令和5年度は、これまでの研究を軸に「長良川鵜飼」の鵜匠の語り(オーラル・ヒストリー)のデジタル教材化を行い、地域の人々の語りのデジタルアーカイブを教材に活用する上での要素についてまとめた。 初年度(令和3年度)の調査および昨年度(令和4年度)の「長良川鵜飼」の鵜匠の語りの撮影記録資料などを、デジタルアーカイブの「集合資料提示」型(静止画や動画などの各種データをまとめて提示する形式)で整備したコンテンツを元に、コンテンツ収録データの簡易利用版となる、地域学習教材「鵜匠さんの話から学ぶ ぎふ長良川の鵜飼」を作成した。 「集合資料提示」型コンテンツでは、「長良川鵜飼」鵜匠の語りのデジタルアーカイブとして、語りの動画や文字起こしデータ、関連資料として「長良川鵜飼」や長良川周辺の自然環境、街道などの静止画・動画がまとめられている。大学生・大学院生による、これら「集合資料提示」型コンテンツの収録資料を用いた「長良川鵜飼」の鵜匠の語りのデジタルアーカイブ化の実践では、同じデータのまとまりからであっても、電子書籍、ウェブサイト、リーフレットなどさまざまな媒体でデジタル教材が作成され、鵜匠の語りの取り上げ方も、記録された語りの全てをまとめたものから、鵜との関わりに焦点をあててまとめたもの、鵜飼という伝統の技に注目したものなど、その内容もさまざまであった。このことから、人の語り(オーラル・ヒストリー)のデジタル教材化には、語りの動画や静止画データ、語りに関係する各種資料データなど、さまざまなデータがフラットな状態で提供される「集合資料提示」型コンテンツは、それを自らが選択し,再構成するキュレーションに繋がる効果が得られると考えた。
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