本研究は、筆者が大学生や高校生の理解度が低くミスコンセプションも多く存在する天体気象分野の学習をより充実したものとするために、気象研究所の荒木(2018)が実施した「シチズンサイエンスによる超高密度雪結晶観測」等を参考にしながら学校を基盤としたシチズンサイエンスを取り組むことで、義務教育から高等教育、そして市民の学習が進むのではないかという仮説のもとで、研究協力してくれた高校や小中学校とともに行った研究である。 筆者が運営指導委員を務める京都府立桃山高校、探究学習をサポートしている京都府立宮津天橋高校、京都府立峰山高校、京都府立北稜高校、理科の授業をサポートしている長岡京市立長岡第二中学校、高槻市立小学校2校での試行実践研究からは、学校の探究活動がシチズンサイエンスの萌芽となるような事例が数多く生まれ、その事例は他校の教育活動に活用できる波及効果の大きいものである。 宮津天橋高校宮津学舎の事例としては「宮津湾の海陸風の研究」、京都府立桃山高校の事例としては「高校生が企画した南山城水害を考える学習会(この学習会は、地域の人々と高校生、気象予報士を含めた研究者が、フィールドワークとワークショップを行うという先駆的な防災学習となった」といったものがある。また、長岡第二中学校の事例としては、気象学習を系統的に行うために実験を組み込んだ概念型カリキュラムの開発を行った。高槻市立五領小学校では、「質問づくり(QFT(Question Formulation Technique)からコアクエスチョンを選び、対話型論証で台風について児童が学ぶ授業」を開発することができた。この授業実線は研究会で他校の教員にも公開された。また高槻市立三箇牧小学校では、子どもたちの問いから淀川を学ぶ実践が生まれ保護者に公開された。このように本研究により学校から発信する多くの実践が生まれた。
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