研究課題/領域番号 |
21K02617
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
荊木 聡 園田学園女子大学, 人間教育学部, 准教授 (90881954)
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研究分担者 |
吉田 雅子 大阪体育大学, 教育学部, 講師 (00849698)
高宮 正貴 大阪体育大学, 教育学部, 准教授 (20707145)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 価値の一般化 / 質的拡充 / 時処位 / セパレート式 / 体験 / 宿題 / 価値認識 / 積極性 |
研究実績の概要 |
まず、村上敏治の道徳授業論の考察では、青木孝頼と村上敏治の「価値の一般化」は、「場面の拡大」と「自己との対話」 の2つを目的にしている。しかし、村上の場合、「質的拡充」、つまり「時処位」に応じた価値判断を問うことが青木と異なる。展開前段でも「抽象化」という思考過程において「価値の一般化」が始まっている。展開後段での価値の一般化の工夫として意図的に行うべきことは、「抽象化」だけでは十分に対応できない「質的拡充」、つまり「時処位」に応じた価値判断をさせることである。こうした学習活動の必要性は、『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科道徳編』における「道徳的判断力」の定義からも明らかである。すなわち、「道徳的判断力」の定義は「それぞれの場面において善悪を判断する能力」だからである。この定義に基づけば、道徳的判断力を養うためには、教材で描かれている場面を通して一般的な価値理解を得る学習活動だけで十分とは言えない。その一般的な価値理解を他の特殊 な場面にも適用した上で、その価値理解を同じように適用できるかどうかを吟味する学習活動が必要なのである。 次に、実践面からの授業力向上に対するアプローチの一つとして、50分授業を25分間×2セクションに分け、間に道徳科の宿題を課すというセパレート式道徳授業を提案した。豊かな体験を積む期間を設けた授業と従前授業を比較した結果、宿題を課し共通の体験活動に基づいて議論し交流した授業は、「意見の量」「意見の質」や「授業への積極性」などにおいて有意に高まることが分かった。 なお、宿題設定の実現性についてであるが、体験課題として扱える教材は、全体の88%を占めており、少なくとも9か月以上の長期間に亘り、このセパレート式の授業形態で実践を押し進めていくことができる。したがって、体験課題を宿題として課すセパレート式授業の実現性は高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
道徳科指導書は高価なため、各社各学年1冊ずつしか入手しておらず、当初は、1つの指導書を手に取りつつ対面で議論する予定であったが、コロナ禍の中で思うように対面で打ち合わせし議論する機会を設けることができず、教科書教材の指導案分析の進捗状況が不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に完成するべき指導書を用いての指導案分析を進めつつ、それと併行して授業実践の参観・撮影・考察も進めていくこととする。 また、小学校教科書の全教材に対する指導案分析については、当面保留にし、中学校教科書の教材に関して、指導案作成上及び発問構成上、課題となっている内容項目についてのみ、吟味・検討することとする。 さらに、以上のことを踏まえて、《授業構想力》(3視座の有無と効果[反応予想]、 発問間の繋がり、等)と《授業対応力(臨機応変のタクト力)》(生徒との遣り取り、生徒発言の受け止めと評価語、生徒発言のキーワードの選択、板書内容と位置、追究発問の質と場面、等)を構成する要素とその実践上の活用について明らかにしていく。 併せて、学生や教員を対象に、イメージ色の調査並びに以下のA~Iの項目についても調査的研究を進めていくものとする。 A:3視座を与える、B:3視座に基づく発問例を大量に示す、C:発問並べ替え課題、D:発問単独vs発問群の中での効果量比較、E:発問削除vs発問群の中での効果量比較、F:追究発問力養成(発問に対する発言予想・発言に対する発問設定・「発問・発言 登山マップ」の作成体験)、G:内容項目(道徳的価値)の実践へ落とし込むための緩衝的理解、H:小学校教材の活用、I:セパレート式授業+宿題(体験課題)
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、実践を通じた調査研究のデータ回収が進められず、授業ビデオやパソコンの購入の必要性が高くなく、同じ価格であれば、必要が生じたときに購入する方が性能の高いものが入手できるので、1年購入を遅らせることにした。
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