研究課題/領域番号 |
21K02629
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中島 英博 立命館大学, 教育開発推進機構, 教授 (20345862)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 組織文化 / 大学改革 |
研究実績の概要 |
2023年までの研究では、大学組織内の複数の制度ロジックの葛藤や共存に関する調査、および、大学構成員による業務の過程で自身の優秀さを隠す行動に関する調査を進めた。 前者の調査では、米国の2つの州立大学を事例対象として調査を行った。どちらの大学も戦略的な変化が求められる機関であるが、役職者が用いる言語の違いが、構成員の業務に与える影響を明らかにした。たとえば、役職者が市場ロジックを利用した大学では、組織文化がより企業化し、教職員の間で意見が分かれたり、役職者の示す方向性への懸念が高まる傾向があった。一方、役職者が学術ロジックを利用した大学では委員会等を通じて、市場、社会制度、学術の複数ロジックを融合させた改革案を策定していた。 後者の調査では、日本の2つの国立大学を事例対象として調査を進めた。特に、Organizational stupidity(Alvesson & Spicer 2012)の枠組みを援用し、職場でのOrganizational stupidityの存在を探索する調査を行った。主な示唆は2つあり、組織内で上位の階層に付く教職員ほど時間の圧力を感じており、その圧力が省察や批判的思考を抑制すること、および、その圧力は上位職者との会議や作業など、接触機会の多い教職員ほど大きくなることを示した。逆に、非公式組織や学外ネットーワークを持つ人ほど省察の機会が増え、そのことが上位職者からの影響を受けにくくしていることを示し、組織改革の実践的示唆としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究代表者の異動に伴いエフォートの偏りが生じたが、2022年度から2023年度は質的データを得るための面接調査を計画通りに行うことができた。また、成果の 一部は学会報告や論文としてまとめた。ただし、学会のオンライン化に伴い、一部の研究費が使用できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの調査で、大学組織には、構成員の能力発揮を阻害する固有の組織文化要因があることが示唆された。この文化は、上位文化である日本の社会が持つ文化の影響もあり、欧米で開発されたモデルであるOrganizational stupidityやFunctional stupidityの枠組みを援用しながらも異なるモデルを提示できる可能性がある。この課題に対し、組織のルーチンと文化の両面からのアプローチすることで、西欧諸国の文化を前提としたモデルだけでなく、日本や東アジアに特有の文化を考慮したモデルを提示する。この課題には、米国や欧州の共同研究者の協力を得て、国際比較をしながら取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための旅費を計上していたが、学会のオンライン開催化に伴い、発表には至ったものの予算を大きく下回ることとなった。ただし、今後学会の方針としてオンライン開催を縮小していく方針が示されており、次年度以降に使用する。
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