研究課題/領域番号 |
21K02630
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
林 篤裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70189637)
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研究分担者 |
坂本 尚志 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (60635142)
児玉 忠 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (50332490)
鈴木 慶子 長崎大学, 教育学部, 教授 (40264189)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国語教育 / 哲学教育 / フランス / 小論文試験 / ディセルタシオン / 型 |
研究実績の概要 |
本研究課題に参加している研究者の研究領域は、教科国語教育、哲学、高等教育論、統計科学、教育工学等と多領域にわたっており、それぞれの領域でこれまで活躍してきた。文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業(平成28年度~平成30年度)に関与したこと等、幾つかの偶然が重なって本プロジェクトに参画しており、このことから特定の領域に偏ることなく広い視点から一つの課題に取り組み議論することができ、この点も本研究課題のユニークな点である。 第3年度である当該年は、これまでの研究成果に基づき、各メンバーが本課題のテーマである「論理的記述力」に関連する考えを相互に紹介しあい、議論・意見交換を行ってきた。具体的には、個々の研究者が行ってきた研究成果を持ち寄り、Web上の情報共有システムを有機的に利用したWeb会議システムでのミーティングを2回、参集しての対面での会合を2回の合計4回の研究会を行った。 その結果「論理的記述力」を涵養するためには、所与の課題を構造立てて理解するフェーズと、それらを相手に理解し易く表現する能力が必要であることが判った。またこれらはその国の教育システムや固有の文化とも密接に関係しており、一筋縄では獲得できない能力のように類推された。例えば、フランスにおいては哲学教育の中で論理立てて記述する能力を育成しているが、そのためには、過去の偉人が構築した考え方等を基幹知識として修得した上で、表現するための「型」自身も教え込むことに依って表現能力の形成を行っている。このように「論理的記述力」の修得を実践するために身に付けておくべきスキルは多岐にわたり、しかも輻輳的に関連して存在し、一朝一夕に実装できるものではないことも類推された。これらを国語科の授業の中で涵養させるには計画立てた工夫が必要であることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参画研究者の各専門領域から想起される「論理的記述力」の基幹要素や捉え方について相互にアイディアを出し合って共有するという活動は概ね達成されたと考えている。しかし、本テーマは進行すればするほど多くの関連する事項が輻輳的に絡み合っていることが明白となり、これらをどのように紐解き、もしくは、収斂させれば良いかの目処が立てられずにいる状態である。とは言え、「論理的記述力」には考え方を表現する「型の修得」が一つの有力な獲得方策となるとの共通認識を獲得できた。 また、当初予定していた渡仏しての訪問調査はCOVID-19の影響等で順延としたため、その現地調査が現時点では未実施である(2024年夏に実施するべく準備を進行中である)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究活動を通して、それぞれの参画研究者の研究領域から観た「論理的記述力」については、一定程度相互に理解を深めることができたと考えている。そこで今後は、これらの成果を土台としつつ、渡仏して実際に教育にあたっている高等学校教員にインタビュー調査を行うと共に、それらの知見を加味して具体的な涵養方策を検討・模索することとする。 これまでの一連の研究で、フランスの高等学校において実施されているディセルタシオンの作成技法の学習過程は、論理的な文章を作成することを生徒に習得させる有力な参考事例となると考えている。そのためには、論理を展開するための基幹知識を獲得した上で、筋道立てて論を展開するための「型の修得」が必須となっていることから、高校教員がこれらの過程をどのような工夫を加えながら教育にあたってるかを丹念に調査する予定である。教育のメリットは比較的公表・流布されることも多いが、デメリットについては担当者に我々の研究目的を理解てもらった上でしかご紹介いただけないと考えるので、我々の研究課題・目的を丁寧に説明した上で調査に臨む予定である。また、「論理的記述力」は高校教育や大学入試に留まるものではなく、その後も継続的に人間形成の一翼を担う能力であると考えられるので、フランスにおいてはどのような効果が見られるか等についても調査する予定である。 本研究課題の最終年度である本年度は、これらの調査で得られた知見も加味しながら本課題に対する一定程度の成果を達成し教育現場に提言できるように検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研では当初より渡仏して現地の高等学校教育における哲学教育の実態を調査することを計画しており、その予算措置も完了していた。しかし、COVID-19の影響や訪問先との日程調整が難航したこと、および、研究の進度を考慮すると渡仏調査を次年度に実施する方がより効果的であるとの結論に達した。よって、2024年度に渡仏しての訪問調査を実施するために、主には渡航経費を中心に次年度に繰り越す措置を取った。 幸い訪問先の理解・協力もあり日程調整や旅程の準備は順調に進んでおり、8月下旬にボルドーとパリで訪問調査をさせていただけることが決まっているので、有意義な調査とするべく現在急ピッチで準備を進めているところである。
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備考 |
本科研に参画している研究者間の情報共有や、これまでの検討事項を後日確認するためのサイトとして運営・利用している。よって、広く一般に公開しているWebサイトではないため、本URLの取り扱いには注意していただきたい。
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