研究課題/領域番号 |
21K02664
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
清水 一彦 山梨大学, その他部局等, 理事 (20167448)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 単位制度 / GPA / FD / 卒業制度 / 単位互換 |
研究実績の概要 |
本研究は、教育のデジタライゼーションと呼ばれる新たな時代における大学の価値形成のための単位制度の創造を追究することを目的としている。初年度は、わが国の単位制度の柔軟化・弾力化過程において所期の趣旨はどのように変容し、なぜそれが単位制度の形骸化に繋がったのか検証することが課題であった。 初年度の研究によって得られた知見及び成果は、以下の通りである。 (1)わが国の大学単位制度は、戦後の新制大学の成立とともに導入された。それまでのドイツ流の講座システムからアメリカ型のカリキュラム制度への移行であり、「一般教育」とともに新制大学を特色づけるものであった。 (2)単位制度は戦後の大学改革において常に改善・見直しが行われ、現行制度の骨格は1956年の大学設置基準(省令)出来上がった。これまで1単位の定義、及び卒業要件としての総単位数の規定は変わりなく、運用の柔軟化・弾力化が絶えず行われた。 (3)単位制度の形骸化、硬直化は、およそ次の3つの要因によってもたらされたと考えている。①大学人の単位制度に対する理解不足、②教える側の教師中心主義で学修者の観点が薄かったこと、③最低基準的性格が強調されすぎ、標準的性格が薄れてきたこと、などである。 (4)文部科学省中央教育審議会大学分科会の下に設置された教育の質保証部会が「審議のまとめ」を公表し、現在同分科会において大学設置基準の見直しに向けた単位制度改革が議論されている。その見直し、改革の論議において、初年度の作業内容は活かされている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長びくコロナ禍は予期しない最大の状況である。国内外の調査研究は著しく制限され、大学現場における実態の把握には支障を来した。 こうした中にあって、初年度の作業計画については、収集した文献・資料を整理しながら、単位制度の歴史的変遷過程及び問題点・課題を明らかにすることができた。単位制度のパイオニアであるアメリカでの単位制度の成立・発展過程との十分な比較検討はできなかったが、上述の得られた知見を含めて全体としては順調に進んでいると評価することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によって大学の授業の在り方とともに単位制度の運用に大きな変化が生じてきている。オンライン授業が常態化し、単位制度の柔軟化・弾力化が加速化された。政策的には、文部科学省中央教育審議会の質保証部会の審議のまとめを受けて、大学分科会では単位制度の改革を含む大学設置基準等の大幅な見直しが始まっている。 本研究では、こうした政策論議に携わりながら、ウィズコロナあるいはニューノーマル時代における新たな単位制度の創造を目指し、①高等教育のユニバーサル化がなぜ学生の学びを多様にしたのか、②学びの多様化を保障する授業方式の在り方をどう考えるのか、③コロナ禍の影響を受けた大学観の変容をどう理解し、そのための単位制度をどう創造していくのか、次年度以降の重要な研究課題となる。研究計画の大きな変更はない。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による一部調査研究の機会が制限されたためで、その分は次年度の使用計画に追加する予定である。使用計画に大幅な変更は生じない。
|