研究課題/領域番号 |
21K02666
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
助川 たかね 岡山県立大学, デザイン学部, 特命研究員 (10440421)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | covid-19 / 新型コロナウィルス感染症 / 授業運営 / 外的困難 / 対応策 / 適応力 / レジリエンス / 海外の大学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、5ヶ国5大学の教育機関を対象として、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)への対応策と決定過程に関与した研究者や職員、学生など関係者の「心情と行動」の変遷過程を再現し検証することで、教育環境の外的困難に対する適応力を探ることである。学部や研究科のなかでも、特に実技や演習、現地調査によって人と人との接触機会が多く感染症対策が難しいとされる教育分野を対象としている。 2021年度は、①国内大学での事例調査、②海外大学のうち1校の調査を実施した。 ①国内調査は感染環境の変化を考慮しながら、海外大学に比べても先進的と評価できる機関を選び、海外への本調査と並行して実施してきた。双方向授業を積極的に取り入れ、設備や運営に先進的かつ迅速な取り組みを実現した事例について現地調査と聞き取り調査を実施したが、感染終息後でも活用できる将来的投資となっており、研究テーマである適応力を示すものであった。 ②海外調査は、対象5ヶ国でもCOVID-19によって異例の授業運営を強いられる状況であったが、感染対策に成功したと評される台湾の調査から開始し、一次調査を終了した。今後、補足的に二次調査も実施する。 調査対象は、台北にある国立台湾大学の工学院に所属する建築與城郷研究所(大学院)である。教員、職員、修士学生に対するアンケート調査を経て、教員と職員には個人面談、学生にはグループ面談の形式で聞き取り調査を実施した。研究代表者による現地調査は実施せず、台北在住の同研究所卒業生である研究協力者に作業を委託した。教員の大半は英語に堪能だが、同大学出身者と母国語で話すことで可能な限り本音を引き出す環境を整えた。研究協力者には、台湾のCOVID-19対策について日本国内では入手できない台湾語での情報収集も委託し、外的環境が現場に与える影響についてより広範で詳細な調査分析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①各国での感染状況の拡大と減少を見極めながら、その時間的ずれを利用し、資料調査、現地調査、遠隔での調査を無理のない状況で効率的に進めることができた。 ②現地の状況に精通し、対象機関の学問分野にも理解のある現地研究協力者を得られたことで、予測不能な状況にあっても柔軟な対応が可能となった。 ③台湾の対象機関や対象研究者については、研究代表者自身が過去に別の調査を実施した経緯があり、都市や機関の状況に対する知見があったため、現地とのコミュニケーションや軌道修正作業が円滑に行われた。 ④別の研究課題のために実施した台北での最後の現地調査は、日本ではまだ厳格なCOVID-19対応が取られていない状況にありながら、台北ではいち早く各種対応策を導入した時期であり、そのとき実際に経験した対策と今回の調査で得られた情報から、その経緯を実感を持って理解することが可能となった。 こうした要因により、人との接触が制限される状況にあっての現地調査ではあっても、時間的、地理的な問題を軽減し、一次調査として、各種情報は充分に収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、感染状況によっては台湾と同様に各国とも現地の研究協力者と共同で一次調査を実施する。予備調査および現地調査についての一次調査の手法は台湾の調査過程でほぼ確立できたため、各国の状況に合わせて一部修正すれば応用が可能である。この手法構築の時間が大幅に減少できるため、各国の現地調査に注力する。 研究計画前半では、韓国での調査を先行し、続いて米国での調査も開始する予定であるが、韓国ソウル市の感染状況は感染者数と対策の両面で動きが大きく、予断を許さないこともあり、米国での調査を先行して進める場合もある。このため、両国の予備調査および現地調査の準備は並行して進める。 研究計画後半では、シンガポールの予備調査および現地調査の準備を開始し、年度末までに現地調査を研究代表者によって、もしくは現地研究協力者に委託したうえで完了する。 国内調査では、平常授業に戻った大学も増えたことから、新たな段階に入った各大学の取り組みを2021年度対象機関を中心に調査を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、151,460円と予算の13%であり、各費用項目の執行状況は、ほぼ予定どおりである。機関内の取りまとめのために研究者に支払う予定であった協力費は、一次調査では先方の配慮もあり発生しなかったため、次年度以降の二次調査の際、使用する予定である。
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