研究実績の概要 |
本研究では,3つの調査研究を実施することで,日本の学習環境デザインにおける人的サービスの現状分析とアジア諸国における学習環境デザインと人的支援サービスの実態との比較により,今後の日本におけるLCを中心とした学習環境デザインや学習支援サービスへの有用な知見の獲得を目指している. 2021年度は「日本のLC担当者への半構造化インタビュー調査(国内)」に取り組んだ。インタビュー調査の事前準備として、以前に行ったCiNiiを用いた文献調査の追加調査として「ラーニングコモンズ」に加えて「学習環境」「学習空間」「アクティブラーニング」「ライティングサポート」など、キーワードを拡張して抽出した文献(対象期間:2019年度~2021年度)のレビューを実施した。 その結果、2020年度に入り、LCを取り扱った文献数は減少するが、主に起用論文・原著論文で学習支援サービスに関する利用実態分析や実践報告の議論が継続されていること、一方でコロナ禍における各大学での取り組みはまだ文献の形での表出はほとんどされていないことが確認された。学習環境デザインに関わる教職員が現場での対応に追われ、様々な取り組みや実践の内容が論文化されるまでに至っていないこと、また物理的空間における活動を中心としたこれまでのLCや学習環境に関しての議論の限界が示唆された。 加えてコロナ禍以前の学習支援の実態調査やコロナ禍における学習支援内容の変化に関する調査では、対面での活動も制限がある中で実施しつつも,オンラインを用いた活動を展開することで学習支援や学生スタッフの活動の幅が広がっていることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の前半のうちに国内の大学のLC担当者への実地インタビューを完了する。また台湾・韓国の大学に対する学習環境および学習支援に関する質問紙調査については現地在住あるいは当該国出身の研究協力者の協力(依頼済み)を得て、質問項目の検討を行い、ブラッシュアップしたうえで、実査を行う。 質問紙においては日本で実施した悉皆調査の設問を参考に①基本情報(LCの有無,LCの数,LCの場所等)、②施設・運営概要(設置年月,設置場所,面積,設置のきっかけ等)、③人的サービス内容(提供サービス,提供方法,誰が学習支援を担っているか等)、④組織戦略,評価方法(中期計画等でのLCの位置づけ,LCの評価,効果測定等)の各カテゴリについて確認し、同時にコロナ禍における学習環境デザインに関する動向についても調査項目に取り入れ,アフターコロナにおける学習環境デザインをどう考えるかについての示唆を得ることを目指す。 加えて、質問紙調査の結果にもとづき,2023年1月~3月にかけて現地における施設見学及び人的サービス担当者へのインタビューを行うことにより、最終年度の分析のための十分なデータ収集に努めたい。
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