研究課題/領域番号 |
21K02678
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
菊地 一文 弘前大学, 教育学部, 教授 (80509141)
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研究分担者 |
杉中 拓央 東北文教大学, 人間科学部, 講師 (70755917)
藤川 雅人 島根大学, 教育学部, 准教授 (90845538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャリア・パスポート / 知的障害教育 / キャリア発達 / 個別の教育支援計画 / 本人参画 / 対話 / 目標設定 / 振り返り |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3点の取組を進めた。 1点目は質問紙調査の分析である。データを再整理し、知的障害特別支援学校におけるキャリア・パスポート(以下、CP)の作成と活用に関する現状と課題を明らかにした。約7割の教員が、CPが教員に与える効果として「児童生徒のこれまでの学びや思いを理解することができる」、児童生徒に与える効果として「これまでの学びを可視化でき、振り返りができる」と認識していた。また、自己表出の難しい児童生徒への対応、児童生徒自身の課題や目標の自覚といった課題が挙げられ、その解決に向けたCPの活用による対話の重要性が示唆された。 2点目は実践研究の継続実施である。特にPATHやTEM図の活用による振り返りと対話については、知的障害のほか、発達障害や精神疾患のある特別支援学校高等部及び高等学校に在籍する生徒を対象に試行し、その効果を確認するとともに、障害の状態により、手続きの簡略化や補助ツールの作成など、カスタマイズの必要性や効果的に実施するための方向性が示唆された。また、より効果的に活用するためには、時数の確保やカリキュラムの工夫の必要性が挙げられた。 3点目は研修プログラムの開発と試行である。実効性の高い研修プログラムを提供するためのCPセミナーを企画・実施した。CPセミナーは7つのセッションで構成する研修プログラムであり、全国各地から約30名の参加者に対して実施した。事前・事後アンケートを実施し、CPに関する認識の9項目について、Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて有意差検定を行ったところ、全ての項目で有意な差が認められ、受講者のCPに関する認識の高まりが示唆された。 以上の成果の一部は、日本特殊教育学会第61回大会の自主シンポジウム等をとおして報告したほか、日本発達障害学会「発達障害研究」への掲載が確定している。また、大学紀要や実践誌等で知見を発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した①知的障害特別支援学校を対象としたCPの作成と活用に関する質問紙調査、②目標設定と振り返りを中心とした対話による気づきを促す方策に関する実践研究、③本研究の成果を基にしたCPの活用促進に向けた研修プログラム開発、3点について終えることができた。 また、本研究をとおして得られた知見について論文化し、学術雑誌や大学紀要をとおして発信するとともに、特別支援教育に関する実践誌等の論説や実践解説として発信し、知見の普及に努めた。 さらには、各地の特別支援学校の研修会や教育センター等の研修講座において、本研究の知見を発信し、成果の普及を図ることができた。 なお、調査研究の結果については、複数の視点からの分析を行っているため、今後、引き続き論文化を進め、発信するとともに、本研究全体を総括し、知見の普及をより図っていくために書籍化を進めているところである。 以上のことを踏まえ、成果普及を図るために本研究を1年間延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、本研究の総括として、調査研究、実践研究、研修プログラム開発から得た知見を「特別支援教育におけるキャリア・パスポート活用ガイドブック」(仮称)としてまとめ、書籍として刊行する。また、本研究の知見を普及するための動画コンテンツや研修プログラム資料の配信等についても検討するとともに、全国各地の特別支援学校の研修会や教育センター等における研修講座での活用を図っていく。 実践研究については、今後も学校現場の協力を得て、多様なニーズを有する対象に対して継続実施し、知見を積み重ねるとともに、CPの効果的活用に向けた時数配当やカリキュラム・マネジメントの課題について、解決の参考となる方策について検討し、提案していく。 さらには、CPの作成と活用に向けた教員の負担軽減やCPの効果的活用の方策の一つとして、個別の教育支援計画や個別の指導計画との関連を図ることなどについても検討する。
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