研究課題/領域番号 |
21K02685
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
狗巻 修司 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (30708540)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 反復的行動 / 相互交渉 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)児にみられる「反復的行動」と対人相互交渉における行動の関連を検討するため,2021年度は,1)関連する先行研究のレビュー,2)療育施設における保育場面の観察とデータ整理・分析,3)奈良女子大学大学院附属心理・教育相談室での支援場面の観察・分析,の3点を重点的に実施した。 先行研究のレビューでは,ASD児が示す反復的行動,とりわけ自傷行動に着目して,先行研究の到達点と研究課題について整理した。自傷行動は反復的行動の中でも実践での対応が難しいとされ,この行動の生起に関連する要因については先行研究間で結果が一貫していないこと,対人相互交渉の中でのやりとりが自傷行動の生起頻度の増加や重症化につながる可能性があること,そして,発達早期の段階における自傷行動の変容過程を他機能の発達との関連から検討した研究が少ないことが明らかとなった。 同時に,療育施設での観察,および,相談室での観察を実施し,1)ASD児が示す反復的行動,2)対人相互交渉に関連する機能(言語・非言語機能,遊び),そして,3)相互交渉の相手となる他者(保育者など)のはたらきかけ方,および,ASD児と他者との関係性の3点を中心に,データの整理と分析を実施した。現時点では予備的な分析を進めている段階ではあるが,集団での療育場面では広範なタイプの反復的行動が生起していること,それぞれの反復的行動に対する保育者のはたらきかけ方に共通する側面と,タイプに応じて対応が異なる側面が存在する可能性があること,そして,相談室の個別支援の場面の分析から反復的行動を活かして支援者が活動を展開するなど反復的行動が適応的側面を有する可能性があることの3点が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の状況が落ち着かず,療育施設での観察開始が遅れ,十分なデータを確保するに至っていないため
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今後の研究の推進方策 |
反復的行動についての先行研究のレビューと観察を継続しつつ,観察で得られたデータを用いて先行研究の課題として見出された発達早期段階における自傷行動と対人相互交渉スキルとの発達的関連の検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症による影響を受け,他の科研費を1年間延長する申請を行い,そちらの研究課題の遂行を優先せざるを得なかったこと,計画していた療育施設での観察の実施が計画通りに実施できなかったことによりデータ取得ができず,データ分析の人件費が予定していた通り執行できなかったことが主な理由である。 次年度以降の使用計画として,1)観察データを取得する機会を増やすため,大学院生をアルバイト雇用し,保育場面などの観察を実施することで人件費として執行すること,2)データ分析のための作業用PCを購入することを予定している。
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