研究課題/領域番号 |
21K02692
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (60202389)
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研究分担者 |
石塚 祐香 作新学院大学, 人間文化学部, 講師 (40817574)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペアレント・トレーニング / 社会スキル / 発達障害 / オンライン支援 / 発達アセスメント / 環境アセスメント / 対人相互作用 / 学校 |
研究実績の概要 |
発達障害児を対象に,生活を支えるコミュニケーションスキル,言語スキル,社会スキルを支援する「統合型発達支援プログラム」を構築し,それをペアレントに実施してもらう「オンライン発達行動支援」の効果を検証することが研究の目的である.支援者によるオンライン・ペアレント・トレーニングを受けながら,保護者が家庭で,週4回程度子どもへの支援を実施した.その効果を「保護者の支援スキル獲得」と「発達障害児の行動獲得」の2つの観点から客観的に解析した. 発達障害児が実際の園や学校で遭遇している現実的な場面を,オンライン会議システムを活用して設定し,日常生活環境において適切なコミュニケーション行動,言語行動,社会行動を獲得するためのオンライン教材と支援プログラムを作成した.開発したプログラムを支援者がクラウドにアップロードし,保護者がそれをダウンロードして家庭で実施し,その様子を撮影した動画を保護者がクラウドにアップロードするサイクルを構築した.その映像と成果のデータを視聴しながら,ペアレント・トレーニングを実施した.その結果,幼児においては,機能的発話数,コミュニケーション行動数(アイコンタクト,笑顔)の増加が示された.小学生においては,「自然な会話をする」「予期せぬ事態に対応する」「文脈を読み取る」「相手に教える」という学校生活の基本となる言語行動・社会行動,および,ひとつの話題をめぐっての2名の発達障害児どうしの対人相互行動数が増加したことが示された.保護者による評価の分析から,家庭支援とペアレント・トレーニングは,保護者の満足度が高く,負担度が低いことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家庭で実施でき,子どもの発達促進をもたらし,保護者の満足度の高いペアレント・トレーニング方法を構築することを目的に,発達支援技法,インターネット,クラウドサービス,オンライン会議システムを有機的に統合した「オンライン発達行動支援」の基盤を構築した.多様なニーズのある発達障害児,保護者に対して,構築した支援プログラムを適用することで,その効果を検証してきた.構築したプラットホームを活用して,オンライン・ペアレント・トレーニングとオンライン教材を包括した行動発達支援プログラムを実施した結果,小学生については,学校生活コミュニケーションスキル,同年代の子どもどうしの対人相互行動スキルの獲得を促すことができた.幼児については,アイコンタクト,笑顔などの基本的コミュニケーションスキルと,機能的言語スキルの獲得を促進することができた.また,コミュニケーション行動が増加することで,問題行動が減少し,保護者のストレスも低減するという結果も得られた.重度知的障害のある発達障害児,癇癪などの問題行動を頻発する発達障害児など,幼児から小学生まで幅広いニーズのある発達障害児を対象に,支援効果を得てきた.これらの研究成果を,査読付き学術誌に掲載し,学会で発表してきた.これらの点から,順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
・多様なニーズのある研究参加者をさらに増やし,長期(6か月),中期(3か月),短期(1か月),などペアレント・トレーニングの頻度と効果の関係を明らかにする研究を実施する.ペアレントの行動,知識,家庭での支援環境の整備などの要因と,発達障害児,および保護者の行動の変化の関係を明らかにする. ・オンライン上で獲得したスキルが,実際の家庭や学校場面で行われるかを明らかにするための研究を,これからも継続的に実施する.子どもと保護者の家庭でのかかわり,および学校生活に関する生態学的調査を,映像,面談,アンケートなどを用いて進める. ・支援効果を高めるため,オンサイト支援とオンライン支援を統合した支援方法を構築し,その効果検証を行う. ・オンライン支援による行動問題解決方法の構築を進め,それが発達障害児自身のポジティブ行動を促進するか,保護者の行動問題解決スキルが獲得されるか,子育ての負担度が軽減されるかを実証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度には,コロナ禍が終息しておらず,予定していた,遠隔地に出張してのオンサイトでのペアレント・トレーニングが実施できなかった.そのため,使用しなかった旅費を2023年度に使用する計画を立てている,2023年度には,大学を拠点として実施している研究と同時に,提携している遠隔地の児童発達支援事業所に出張し,オンサイトでの直接的ペアレント・トレーニングおよびワークショップを行い,オンライン支援とオンサイト支援とを統合するプログラムを実施する予定である.そのため,物品費,人件費・謝金と同時に,旅費を合わせて使用する計画である.
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