研究課題/領域番号 |
21K02710
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
河合 隆平 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (40422654)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東京都 / 全員就学 / 障害をもつ子どものグループ連絡会 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高度成長期における「障害児の教育」の仕組みを「運動」と「ジェンダー」の視点から相対化し、障害児教育を保障する仕組みとその社会的基盤の形成過程を明らかにすることにある。本研究の分析対象は、革新都政という政治的条件のもと、地方自治の課題に障害児の問題が位置づき、教育権保障運動が多様に展開された1970年代前半の東京において、それらの運動をつなぐ役割を担った「障害をもつ子どものグループ連絡会」である。 具体的には「障害をもつ子どものグループ連絡会」の運動の担い手としての父親と母親の両者に着目し、運動における人間関係や経験をジェンダーの視点から分析することで、運動に参加する親が示した、障害のある場合の教育と子育てにまつわる個別の要求や課題が「障害をもつ子ども」の問題として再構成される過程を分析する。 3年間の研究計画の初年度にあたる2021年度は、基礎史料となる「障害をもつ子どものグループ連絡会」とその構成団体のニュース・報告書等を中心に史料収集を行った。本研究でいう「障害児の教育」とは、狭義の「学校教育」だけではなく、就学前の保育、家族が行う育児も含めて障害児の発達を助成する実践の総体を表す。高度成長期の人びとの生活や福祉のなかに埋め込まれた「障害児の教育」を媒介しながら「学校教育」が形づくられる動態を明らかにすることで「学校教育」の固有性を浮かびあがらせる意図がある。そのために、連絡会のニュースのほか、練馬区、大田区、渋谷区、文京区における不就学実態調査、母子保健、障害児保育、障害児学級等に関する実践・運動資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究方法として、個人史・生活史との接点において問題や運動の動態を捉えるために、公文書や個人文書等に加えて、口述史料(オーラルヒストリー)の活用を予定している。そのために、関係者へのインタビュー調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インタビューの実施ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
地区・グループにおける自主保育、「大田区障害児保育をすすめる会」によるダウン症女児の保育園入園運動を事例として、親たちが障害児教育を社会化する論理を発見し、運動の交渉相手である行政側にそれが受容され、制度化される相互過程を分析する。そのために、初年次の方法・史料に加えて、行政史料の収集・分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたインタビュー調査が実施できなかったため旅費を執行することができず、一部を次年度に繰り越した。前年度分の計画と合わせて調査を実施する予定である。
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