本研究は、高度成長期の東京における「障害児の教育」を「運動」と「ジェンダー」の視点から相対化し、障害児教育を保障する仕組みとその社会的基盤の形成過程の検証を目的した。1974年に希望者全員就学を実現させた東京都では、文京区において1971年に「文京区心身障害児実態調査委員会」が組織された。実態調査と話し合いを中心とする運動は、地域の母親運動等と結びつき、同時代の不就学実態調査運動のモデルとなった。高度成長期の障害児教育権保障運動は、障害児の権利侵害の構造をとらえ返し、運動に参加する人びと自身が障害のある子どもとの関係のなかで矛盾や葛藤と向き合いながら主体形成をはかっていく過程でもあった。
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