研究課題/領域番号 |
21K02711
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
内山 仁志 島根県立大学, 人間文化学部, 准教授 (60348604)
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研究分担者 |
菊野 雄一郎 島根県立大学短期大学部, 保育学科, 准教授 (10754723)
赤尾 依子 関西学院大学, 文学部, 助手 (70756098)
関 あゆみ 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10304221)
宇野 智己 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 流動研究員 (40881785)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音読困難 / 発達性ディスレクシア / 読み書き / ICT / 多層指導モデル / MIM / T式ひらがな音読支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、対象となる音読困難児に言語的アプローチの音読支援法とともに、個々の認知特性に応じた聴覚や視覚的支援を行い、その効果を検証すること、そして支援者の輪を広げ、支援者同士の指導力を高めあうことを目的としている。本年度の成果として、以下の3点があげられる。1)小学2年生以上の音読困難児に対し、個別にICTを活用しながら言語的アプローチによる支援を行った。その結果、ほとんどの対象児で誤読数が減少し、音読の流暢性が高まった。2)対象児を含めた小学2年生の学年全体に対して多層指導モデル(MIM)による音読指導を行った。指導の効果は対象児以外の児童にもみられ、発達的変化との区別が難しい面はあるものの、学年全体として音読能力が高まったことが推察された。3)対象児の中で、言語的アプローチが有効でなかった児童を中心に、ペンでタッチすると読める音声付教科書やDAISYの配備などの合理的配慮としてのサポートを行った。県内での読み書き困難児に対する合理的配慮は進んでいない状況にあり、支援対象となった児童の学校を中心に具体的な配慮の方法に関する情報提供と必要な支援の実際を行った。4)支援者の指導力向上を目的として、「しまね読み書き支援研究会」を立ち上げ、2回の研修会をオンラインで実施した。任意での参加にもかかわらず、第1回は30名程度、第2回は70名以上の参加者があった。また県教育委員会の特別支援講座を活用して、音読支援の重要性に関する研修を行った。音読支援の必要性を県内の先生に知っていただく良い機会となった。 R4年度は指導・支援対象児を増やすこと、指導者の読み書き支援に関する知識・技術を向上させる研修会を引き続き開催できるよう準備を行う。またR3年度にすすめてきた視覚課題や聴覚課題を実装して、言語的アプローチでなかなか音読能力が伸びなかった対象児の評価や指導に活用することを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自治体と連携して音読困難児を個別指導につなげる県内の音読支援体制は確立できた。また支援者に対する研修については、県内外に発信する形で2回開催した。第1回は「UDフォントデジタル教科書体の開発背景と明日から使えるUDフォントの活用方法」、第2回は「DAISY研修会」であった。また、県内2つの自治体にて年2回、研修会講師を務め、指導者の指導力、支援力の向上に貢献した。さらに対面で集団および個別の音読指導と支援を行うとともに、オンラインでの個別支援も必要に応じて行った。これらの活動により、音読困難児の困り感が軽減され、重篤化の予防につながったのではないかと考えられる。 しかし、計画当初は個別支援の対象人数を年間20名と見積もっていた。実際にはコロナ禍の影響もあり、事前および事後の評価や年間を通じた十分な指導を遂行できた人数は8名にとどまった。またR3年度後半に視覚および聴覚の困難さを明らかにする課題の実装を計画していたが、対外的な活動が制限されていたため、完成とはならず、予定通りに進展しなかったため、進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は個別指導の対象児をコロナ禍の情勢を見極めながら拡充し、効果検証を進めていく必要がある。またすでに企画済みの音読支援に関する研修会、講演会を、県内外の読み書き支援に関心のある現場の先生向けに実施する。その中で、ICTを活用した有用な研修プログラムを実践していくこととする。合理的配慮に関してはペンでタッチすると読める音声付教科書やDAISY(デイジー)に関する研修会を企画し、実際の運用方法を現場の先生に広めていきたい。さらに解読指導や語彙指導で使用可能なアプリケーションの開発を検討している。 また、言語的アプローチで音読能力が伸びなかった児童に対し、認知特性を踏まえた上で視覚課題や聴覚課題といった別のアプローチで評価した上で、音読能力が伸びるかを確認したいと考えている。そのため、まずは課題の完成を早急に目指すこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナ禍の影響もあり、計画していた視覚及び聴覚課題の実装を見送ることとなった。それと連動して視覚および聴覚トレーニグソフトやICTで使用するアプリケーションの購入を差し控え、次年度に使用することとしたため。
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