研究課題/領域番号 |
21K02722
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
吉井 勘人 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30736377)
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研究分担者 |
長澤 真史 関東学院大学, 教育学部, 講師 (40886925)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症児 / 特別支援学校 / 対話の分析 / 仲間 / 朝の会 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(以下ASD)児は、他者との相互的行為に障害があることから、教室環境における仲間との対話に困難を示すことが予想される。 本研究では、特別支援学校(知的障害)の教室環境におけるASD児の仲間との対話の特徴を検討する。 特別支援学校の中学部1年の生徒6名(4名がASD児)と教師2名を対象とした。生徒同士で相互行為を展開する「朝の会」の中の「健康観察」の場面を分析対象とした。「健康観察」では、ASDのA児(二~三語発話の表出レベル)が、健康観察係として、挙手する生徒の中から特定の生徒を指名する。指名された生徒は自分の体調について言及する場面である。週1回の頻度で6回の「朝の会」をビデオカメラで記録した。分析は「健康観察」場面の全ての発話を書き起こし、発話の連鎖の観点から分析した。その結果、次のような特徴が見出された。対話がスムーズに成立する場合は、[C児:挙手ーA児:指名(「Cさん、お願いします」)ーC児:応答(「元気です」)ー教師:評価]といった一連の発話の連鎖がみられた。一方で、対話にトラブルが生じた場合は、[A児:独り言(指名しない)ーZ児(ASD児):注意喚起(A児が他児を指名するように指さす)ーA児:指名ーE児:応答(「元気です」)]がみられた。ここでは、Z児の援助によってA児とE児との相互行為が成立した。また、[D児:挙手-A児:不適切質問-D児:応答と説明]がみられた。ここでは、A児が、「Dさん、元気ですか?」と質問するべきところを「Dさん、元気です」と場面に適さない発言をした。それに対して、D児(ASD児)は、「はい、元気です。Aさんの言う通り、元気です」とA児の発話の誤りに気づきつつもあえてそれを修復しないで受容する対話を成立させた。このように、ASD児とその仲間との対話でトラブルが生じた場合には、それを補う子ども同士の相互行為が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には、予定していた【研究Ⅰ】教室環境におけるASD児と仲間との対話分析を実施し、分析・結果の整理まで実施した。2022年度は、【研究Ⅱ】ASD児に対する「シェアリングタイム」活動を用いた対話機能の促進支援を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究Ⅱ ASD児に対する「シェアリングタイム」活動を用いた対話機能の促進支援を中心に研究を行う。研究Ⅰと研究Ⅱの成果については、それぞれ日本特殊教育学会と日本発達心理学会の大会にて、ポスター発表並びに自主シンポジウムやラウンドテーブルでの発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の研究成果について、日本発達心理学会第33回大会で発表を予定していたが、新型コロナウイルス感染症対策として会場に参集しないオンライン形式となったため、学会発表にかかる経費などの計画を変更したため未使用額が生じた。このため未使用額は、次年度の日本発達心理学会第34回大会の発表経費に充てることとしたい。
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