研究課題/領域番号 |
21K02736
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
濱井 潤也 新居浜工業高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (10612369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 障害理解教育 / 合理的配慮 / 障害者差別解消法 |
研究実績の概要 |
これまでに実施した「合理的配慮」についての理解を問うアンケート結果及び分析について、全国高等学校教育障害学生支援協議会AHEAD JAPAN2021年度全国大会にて「合理的配慮への学生の理解の現状―合理的配慮をする側の障害理解教育に向けて―」というテーマで教育実践についてのポスター発表を行った。結果として、配慮自体に反対を選択した学生がいずれの年度も3割程度存在することが明らかになった。また、賛成を選択した学生が、配慮を障害学生の権利として「理解」している層、「善意」によるものと考えている層、配慮を、それを必要としない学生に対してメリットをもたらす場合のみ認める「利己」的な層の3グループに区分可能であることを見出した。以上の結果から、まだ学生たちには「合理的配慮」の倫理的正当性への理解が十分には浸透していないと言える。今後はこの倫理的正当性を主題とする障害理解教育カリキュラムを開発・実践し、学生の意識の変化を促したい。 また本科研の基礎理論的研究としての現代政治哲学分野の業績として、広島大学応用倫理学プロジェクトセンター刊行の『ぷらくしす(2021年度 通巻第23号)』に、単著論文「チャールズ・テイラーにおける世俗化の「長征」から読み解く「生きる意味」の奥行」を掲載した。本稿では、カナダの思想家チャールズ・テイラーの最新の大著『世俗の時代』における信仰のあり方の近代への移行に伴う変遷の過程を踏まえることで、トマス・ネーゲルの「人生の無意味さ」を再解釈することを目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「障害者差別解消法」が施工された2016年以降に実施してきた合理的配慮についての理解を問う学生アンケートの結果および分析についてオンラインで開催された全国高等学校教育障害学生支援協議会AHEAD JAPAN2021年度全国大会にて「合理的配慮への学生の理解の現状―合理的配慮をする側の障害理解教育に向けて―」というテーマで教育実践についてのポスター発表を行った。 加えて令和3年度には研究代表者が所属する新居浜高専だけでなく、徳山高専、大阪府大高専でも正式に学生へのアンケートを実施していただき、データの取得に成功した。これらの複数校に跨るデータについては、令和4年度中に集計および分析を行い、何らかの形での研究成果の発表を予定している。 また令和4年度現在、従来のアンケート形式を事前アンケートととし、そのまま「障害者差別解消法」および「合理的配慮」について学べるカリキュラムを受講したのちに事後アンケートを記入する、という形式でのデータ収集を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度現在、従来のアンケート形式を事前アンケートとし、そのまま「障害者差別解消法」および「合理的配慮」について学べるカリキュラムを受講したのちに事後アンケートを記入する、という形式でのデータ収集を開始している。本校新居浜高専1年生全学生を対象にこの形式でデータを収集し、開発した障害理解教育カリキュラムが、どの程度学生の「合理的配慮」に対する理解度、納得度に貢献しうるのかを検討する。 また、令和3年度まではアンケートにおいて特定の障害を明記していたが、令和4年度以降は、実際にアンケートに回答する、配慮を必要としない学生たちに対して、特定の学生を想起させないよう「具体的な障害名はプライバシーの観点から伏せられている」という設定に変更した。 令和3年度には本来近隣高校でのアンケートの実施も想定していたが、前述の障害名を具体的にしていたことがネックとなりアンケートを実施することが結果的にはできなかった。今年度もまた障害理解教育カリキュラムの実施を込みで校種を超えた教育実践とデータ収集を目指す予定である。 またコロナ禍で思うように実施できていなかった特別支援総研等への出張による情報収集等も状況が改善し次第柔軟なタイミングで実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過のため、当初予定していた遠方の研究協力者等との打ち合わせや資料収集を含む出張計画をいくつか断念したため、次年度使用額が生じた。 今年度ももちろん感染状況次第ではあるが、開発した障害理解カリキュラムの研究協力校における実践の展開も含めてまた出張予定を増加して再計画している。
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