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2022 年度 実施状況報告書

数学の探求学習に伴う行動ログデータのマルチモーダルなアナリティクスから学習支援へ

研究課題

研究課題/領域番号 21K02752
研究機関東邦大学

研究代表者

金子 真隆  東邦大学, 薬学部, 教授 (90311000)

研究分担者 北本 卓也  山口大学, 教育学部, 教授 (30241780)
江木 啓訓  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30422504)
野田 健夫  東邦大学, 理学部, 教授 (90431618)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード動的幾何 / 協調学習 / HTML / 深度センサーつきカメラ / 対話テキスト / 操作ログ / 体動ログ
研究実績の概要

既報の通り、初年度においては、学習者が動的幾何コンテンツを用いて協調学習を行う際の学習状況を把握する上で、ジェスチャーのログデータを取得・活用するフローについて、intelのRealSenseを用いた計測システムを考案し、相関係数の1次変換不変性に関するHTMLをベースとした動的コンテンツによる教育実験に投入した。その結果、主に学習データの質的な分析から、操作・対話・ジェスチャーという異なるmodalityの間の遷移に着目して学習状況を推定できる可能性が示唆される一方、センサーデータをいかに取得・処理してジェスチャーの判定に結びつけるかという課題が生じた。本年度は、さらに多くの被験者を対象として同様の実験授業を実施し、この課題の解決を目指した。新型コロナ感染拡大の影響で、学習場面の設定に困難があったことに加え、得られる操作・音声・体動のログデータが膨大になり、その処理に相当の労力を要したが、現段階でようやくまとまった分析を開始できる状況に至っている。具体的には、協調学習の際のコンテンツの画面を数式表現のエリアと操作画面のエリアに分割し、これにワークシートの領域を併せ、学習者の手指が各領域に存在した時間帯をセンサーデータから判定し、これによって各時間帯における学習活動の種別を推定できる可能性が示唆されている。その一方で、実際に協調学習を行う場面では、メンバー間の役割分担に応じて課題用紙の位置が変更されたり、コンテンツのスクロールによって数式表現エリアと操作画面エリアが遷移したりする可能性があり、学習活動の推定を行えるだけの精度を得る上で、動的コンテンツと計測システム双方の設計にさらなる工夫が必要であることも判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、大学生を主たる対象とした実験授業の日程の確保に困難があった。また、協調学習を行わせる際、対象者に対してマスクの着用を依頼せざるをえず、音声データの精度や学習者間での十分なコミュニケーションが行われる環境の確保に困難があった。さらに、タブレットを用いた場合、接触感染のリスクがあることから、これまでに台数を揃えていたiPadを投入することが困難な面もあった。このため本年度は、感染状況がやや落ち着いた6月に2人1組のグループ12組を対象に実験授業を一括実施してなんとかデータを取得し、その後、感染が拡大した期間にあっては、実験データの分析に重点を置くという対応を取らざるを得なかった。

今後の研究の推進方策

2023年度は、新型コロナウィルスの感染が落ち着いてくることが期待されるので、より大規模な実験授業の実施が可能になると考えている。本研究の性質上、操作・対話・ジェスチャーのログから得られる定量的なシグナルと、対話テキストなどに関する質的な分析結果との対照がどうしても必要となり、これに一定の裏付けを与えるためには、相応のデータ量を確保する必要がある。そのためにも、できるだけ早期に本格的な実験授業を実施したいと考えている。
また、これまでの実験授業から浮かび上がった課題である、コンテンツ内のアイテムの配置や課題用紙の位置の設定について、協調学習の進行にできるだけ支障をきたさない範囲で固定できるように工夫し、センサーデータからの学習行動の推定が自動化できるような方策も検討したい。
さらに、対話内容の分析に質的な裏付けを与える上で欠かせない対話音声のテキスト化の作業については、近年の技術的な進展が著しい機械学習をもとにしたシステムを活用し、より正確で手軽にデータを取得できる方法も追究したい。
加えて、独立性の検定をテーマとするHTMLベースのコンテンツを用いたシミュレーション学習を行わせた実験授業の結果からは、探索条件の設定を中心とする細かな授業設計を変更することで、得られる操作ログの傾向や、事後テストのパフォーマンスとの関連性が少なからず影響を受ける可能性が示唆されている。今後の実験授業を実施するにあたっては、上記の教材の設計のみならず、授業の進行などの設計についても注意を払いたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染拡大により、予定していた国際会議への現地参加ができず、該当の活動に関しては2023年度以降に検討せざるを得ないため、その分の旅費を確保しておくこととした。また、新型コロナウィルスの感染拡大が終息し、実験授業の対象者を増やせる状況になって来た際に、センサー付きカメラなどの機材の追加が必要となることが想定されるので、そのための費用も確保している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Analysis of CSCL for mathematical proof based on the log data of learners' verbal and nonverbal communications2022

    • 著者名/発表者名
      Masataka Kaneko, Hironori Egi, Takeo Noda
    • 雑誌名

      Proceedings of 30th ICCE

      巻: 1 ページ: 167-169

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Motivation estimation method for computer supported collaborative learning using tablet computer2022

    • 著者名/発表者名
      Ryo Funabashi, Kohei Nabetani, Takeo Noda, Masataka Kaneko, Hironori Egi
    • 雑誌名

      Proceedings of 30th ICCE

      巻: 2 ページ: 671-673

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 独立性の検定に関するHTMLをベースとした教材の作成と授業設計2022

    • 著者名/発表者名
      北本卓也, 金子真隆, 野田健夫
    • 雑誌名

      京都大学数理解析研究所講究録

      巻: 2236 ページ: 127-139

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 独立性の検定に関するHTMLベースの教材を用いた探究における操作ログを通じた授業設計の影響の分析2023

    • 著者名/発表者名
      金子真隆, 北本卓也, 野田健夫
    • 学会等名
      日本教育工学会2023年春季全国大会
  • [学会発表] 検定に関する教材と学習活動の分析2023

    • 著者名/発表者名
      金子真隆, 野田健夫, 北本卓也
    • 学会等名
      日本数式処理学会第16期第1回教育分科会
  • [学会発表] HTMLをベースとした独立性の検定に関するシミュレーション教材とこれを用いた学習活動の分析2023

    • 著者名/発表者名
      北本卓也, 野田健夫, 金子真隆
    • 学会等名
      名古屋大学高等教育研究センター第207回招聘セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] タブレットを用いた協調学習への参加意欲推定手法の提案2022

    • 著者名/発表者名
      舟橋涼, 鍋谷航平, 野田健夫, 金子真隆, 江木啓訓
    • 学会等名
      日本教育工学会2022年秋季全国大会
  • [学会発表] 動的コンテンツを含むHTML5をベースとした数理統計教材による学習活動における学習者にかかる認知負荷の分析2022

    • 著者名/発表者名
      野田健夫, 北本卓也, 江木啓訓, 金子真隆
    • 学会等名
      日本科学教育学会第46回年会
  • [学会発表] HTML5をベースとする動的コンテンツを含む数理統計教材の作成と利用2022

    • 著者名/発表者名
      北本卓也, 金子真隆, 野田健夫
    • 学会等名
      日本数式処理学会第31回大会
  • [学会発表] 相関係数の性質に関するHTMLベースの教材を用いた学習活動における学習者の行動の分析2022

    • 著者名/発表者名
      北本卓也, 金子真隆, 野田健夫
    • 学会等名
      解答過程解析を中心とする理数系eラーニングの分析・設計・運用に関する総合研究第2回シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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