研究課題/領域番号 |
21K02772
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
成田 一人 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50404017)
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研究分担者 |
大内田 裕 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80510578)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚障がい者支援 / 製図教材 / 点図・凸図 / 3Dプリンター印刷模型 / 遠近法 / 2.5次元 |
研究実績の概要 |
本研究では,机上においてモノの形状・仕組みを触感・触覚・聴覚により知ることができる視覚障害のある人に向けた新しい学習支援教材の開発に取り組む。具体的には,視覚支援学校の授業において,「製図(特に図面の読み方)」の知識習得が可能な教材を用意し,視覚障害のある人がこれまで不明確としてきた形状の理解を可能にしていく。研究期間は3年であり,主に【①形状・光景の撮影(スキャン)】,【②触感・触察して理解できる図面の作成】,【③触感・触察教材の印刷&作製】,【④音声情報の提供】,【⑤教材の評価】,【⑥教材の普及活動】の6つの課題から構成されている。これら各分野での取り組みを連携させた研究推進により,モノの形状を知ることのできる視覚障害のある人に向けた学習支援(製図)教材を開発し,普及を図ることを目指す。2022年度は,2021年度までの結果を考慮しつつ,計画①~③と⑤を中心とした研究に取り組んだ。特に注力した課題は,遠近法が用いられている図面や絵画について,視覚障害のある人に読図の方法をどう理解してもらうかという点である。遠近法が用いられている図面や絵画では,平面に奥行き方向の情報を与えるために斜めの線が用いられる。また,手前にあるものと奥にあるものとの位置関係は大きさを変えて表現されている。これら遠近法による描画は,晴眼の読者に対しては,奥行きを視覚情報として与えてくれるが,触察を使っている視覚障害のある人にとっては,その意図を読解し難いものになっている。そこで2022年度の研究では,遠近法について学ぶことに特化した学習教材を開発した。立体印刷した図面(2.5D)とそれに対応した3Dプリンター印刷模型(2.5~3D)を併用して学ぶ学習教材である。視覚障害のある被験者数名との対談により,この教材の有効性・有用性について評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚支援学校の授業に「製図の知識」を取り入れていくことが,本研究の主たる学術的独自性である。そのために『教育用3D模型の作製』,『点図・凸図面(製図図面)の作成』,『NFCタグを用いた音声による情報補充』等の実施が必要である。さらに,これら教材の活用効果や効果的使用方法について,動脈血酸素飽和度(SpO2)や脳の活動状態等のデータをもとに科学的に研究・考察する。2022年度の研究では,遠近法の理解に特化した学習教材一式を,立体印刷した図面(2.5D)や3Dプリンター印刷模型(2.5~3D)等を用いて製作した。プロトタイプの教材セット数点を用いて,視覚障害のある被験者にその有効性・有用性を評価してもらった感想はおおむね良好なものであった。製図について学ぶための立体印刷図面,3Dプリンター印刷模型等を準備する環境は整い,研究全体としては順調に進んでいる。しかし,音声情報の提供,教材の活用効果や効果的使用方法についての検証が,当初計画よりもやや遅れている。これらについては,2023年度の研究活動で改善を図りたい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2021~2022年度の研究成果を発展させながら,【①形状・光景の撮影(スキャン)】,【②触感・触察して理解できる図面の作成】,【③触感・触察教材の印刷&作製】,【④音声情報の提供】,【⑤教材の評価】,【⑥教材の普及活動】の6つの課題に取り組み,目的の達成を目指す。これまでに,教材を提供するまでの一連の加工工程を整備し,視覚障害のある人が図面を読図する上で課題になるだろう遠近法の理解への対応も図った。2023年度は本プロジェクトの最終年度になるので,これまでの成果を考慮しつつ,製図教材の個数を増やしていく計画である。特に,「音声情報の提供」,「教材の活用効果や効果的使用方法についての検証」に注力する。さらに,利用者の意見を反映させた教材の改良にも取り組む計画でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が,研究の進捗状況や予算状況等をもとに研究実施計画を再検討し,必要としていた物品の購入時期を2023年度に延期したため,当初の計画よりも2022年度の予算の支出が抑えられた。
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